ボイトレから有名な歌手が生まれない訳

私は、歌を聴くのが好きで、インターネットで歌手の動画を時々見て聴いています。

 

音楽のことについては素人なので音楽性についてはあまりわかりませんが、歌声については身体動作をみる一環でさまざまな歌い手さんの歌声をYouTubeを見ながら分析していました。

 

主に80~90年代の歌を聴くことが多いのですが、2~3年年前からYouTubeのおすすめに、ある若手の歌手の名を目にする機会がありました。

 

この若い歌手のことを知らず、ほどんど関心がありませんでした。

 

ですが、ふと、その歌手の歌を聴いてみようと思ったのでした。

 

聴いて見たらビックリ!第一声を聴いた瞬間、「この人すごい」と強く感じました。

 

検索で調べてみると、最近ブレイクしている若手のアーティストだと知りました。

 

ここ10~15年ぐらいにヒットしたアーティストの歌には私的にあまり魅力を感じなかったので、ここ最近の若手の歌にはほとんど関心がありませんでした。

 

ですが、この先入観を見事に打ちこわす魅力的な歌手が若手に現れたとは!

 

「なぜ、もっと早く聴いてみなかったのか」と思いました。

 

ある日、YouTubeを見ていたら、あるボイストレーナーが、この若い歌手の歌声の分析をUPしていました。

 

そのボイストレーナーいわく、「音域は中音域が主で、比較的声は高くない」と言っていました。

 

私もこの見解に、賛成です。

 

「声の響かせ方が個性的であるが歌い方自体はごく普通」とのこと。

 

歌い方自体はごく普通というのには疑問もありますが、声の響かせ方は個性的で、この若い歌手の歌声を聴く多くの人が「声が高い」と感じるのも独特の声の響かせ方によるものです。

 

また、「鼻腔や口腔、喉の共鳴を使って歌っている」とのことです。

 

これについても賛成です。

 

ただ、「高音域になるとリラックスできずに声帯を使って力技ぽい感じでで歌おうとしている。もっと(音域を)伸ばしていこうとする時に(声帯をリラックスさせた声の出し方ができるようにならないと)まあまあきつい(難しい)のではと思う」

また、「(このような見解から)歌手としては突出してうまいほうではないが、自分の世界観を持って表現するタイプの人で、心に響く歌を歌う人だから多くの人に支持させていると思う。私はただ上手いだけの人よりもこのような歌手の方が好きだ。これから、さらに歌唱力が向上するだろう」

という内容のことを話していました。

 

私は???

 

若い人なので今よりもさらに向上するだろうという見解には大いに同意できるが、歌手としては上手い方ではないという見解には???いささか疑問を感じたのです。

 

このボイストレーナーは、この若い歌手が高音域を頑張って張り上げて歌っているように解釈し高音域のクオリティーが低いと捉えたようですが、私には鼻腔共鳴とともに胸郭の共鳴が効かせた芯の太いボリュームのある歌声に聞こえたからです。

 

この分析した動画を見て、ここまで評価するのだからこのボイストレーナーがどれぐらい上手いのだろうと思い、この若い歌手のヒット曲をカバーした歌をYouTubeでUPしていたので聴いてみました。

鼻腔共鳴の少ないボイストレーナー

たしかに、言うだけのことはあって、確かに上手でした。

 

しかし、若い歌手自身が歌うオリジナルよりも低くこもったような声に聞こえたのでした。

 

YouTubeのコメントにも「上手いけれど、全体的に音が低いように思う。原曲は少し高い歌だと思う」という内容が書かれていた。

 

このボイストレーナー自身はオリジナルに忠実に音を取っていると思われましたが、確かに若い歌手より低く聞こえます。

 

この訳は、鼻腔共鳴が弱いからです。

 

鼻腔共鳴が弱いために胸にこもった感じが強く出てしまい、音が低く聞こえたのでしょう。

 

ちなみに、このボイストレーナーは、動画サイトで鼻腔共鳴の重要性を説いていますが・・・。

 

それにも関わらず、当のボイストレーナーの歌声には鼻腔共鳴の要素が少ないのです。

 

若い歌手の声には鼻腔や喉や口腔の共鳴、そして基の音となる胸郭の共鳴が同時に起こっているので、中低音域では胸郭共鳴と共に鼻腔共鳴が起こり、高音域でも鼻腔共鳴と共に胸郭共鳴が起こっているように聞こえます。

 

このことで、独特の雰囲気を醸し出すような歌い方をしています。

 

ですが、残念ながら人は、自分が認識していること以外のことを認識することができません。

 

その証拠に、このボイストレーナーの若い歌手の歌声分析では胸郭共鳴について言及してません。

 

おそらく、胸郭と同時に鼻腔が共鳴することを知らないのでしょう。

 

なので、この若い歌手が高音域をキレイに出せていないことを音域の狭さ、歌唱力の低さと認識したのでしょう。

 

確かに、ここ10~15年ぐらいの間の主流は、ミドルボイス(高音域)とファルセット(裏声)を織り交ぜるように歌う歌唱法です。

 

この若い歌手はこのような歌い方をしていないので、そういう意味では歌唱力がある方ではないのかもしれません。

 

だが、私には、若い歌手の歌声には、鼻腔や口腔、喉頭(のど)、などと同時に胸郭(気管)が共鳴させて、巧みに曲を表現してように感じるのです。

 

昔の話ですが、歌手のスカウトをしている人に「へたウマな歌手は貴重なんですよ」と聞いたことがあります。

 

この若い歌手こそ、音楽業界で貴重と言われる「へたウマ」な歌手だったのです。

へたウマな歌手

「ヘタうま」な歌手とは、「ヘタ」なように聞こえるのだけれど、なんか上手く心に響くような歌い方をする歌手のことです。

 

私は、「ヘタうま」の歌手の歌声に、とても関心があります。

 

「ヘタうま」の歌手について、他の記事でも書きましたが、ここでは、その記事よりも突っ込んだ見解を書いてみたいと思います。

 

「ヘタうま」な歌手の特徴としてまず、音が微妙に外れているように聞こえるけれど、なぜか耳に残り、味があるように聞こえます。

 

ですが、音楽に精通しているアーティストが音を外すとはとても考えられません。

 

私は、「ヘタうま」のアーティストの音は外れているわけではなく、外れて聞こえるだけだと認識しています。

 

なぜそのように聞こえるのかと言いますと、おそらく、複数の共鳴を同時に使って音を出しているからだと考えられます。

 

人は、体の中で音を共鳴させて声を出しています。

 

例えば、太鼓など、すべての楽器には必ず空洞があり、外から力を加えられることでできた音をこの空洞の中で振動させて音を増幅させることで、大きな音を出すことができます。

 

これが、共鳴です。

 

人の体で空洞があり、音を共鳴させることができるのは、胸郭と鼻腔です。(正確に言えば、喉頭や口腔も共鳴に関わっていると考えられます。)

 

このように考えると、「ヘタうま」のアーティストは、身体のさまざまな箇所を共鳴させて複雑な音を醸し出していると言えます。

 

先ほどの「若い歌手」の歌声には、複雑な声が混ざっているのが私の耳には聞こえました。

 

もし、このように声の響き(共鳴)が意図的にコントロールして声を表現しているとしたら、これも歌唱力になるのでは?

 

人は、胸郭、喉(気管)、口腔、鼻腔など複数の箇所を同時に共鳴させることができると考えてられます。

 

そして往年の歌手の中にも複数の箇所の共鳴を使って歌を表現している歌手がいることを確認しています。

 

複数の共鳴を使えるメリットは、表現力を高めることだけではありません。

 

共鳴によって、声量を高めることができます。

 

なので、息切れせずに楽に声を出すことができることです。

 

あと、喉に負担がかからないので、年を取ってもパフォーマンスが落ちずに長い歌手生活を送ることができます。

 

このコツを掴んでいるのは、「ヘタうま」と呼ばれる一握りの歌手だけです。

 

ですが、本来、これは特別な才能ではなく「人として生まれた全ての人に与えられている普遍的な才能である」と私は考えています。

 

なぜかと言いますと、無意識で行われている日常会話は鼻腔と胸郭のダブル共鳴によるものだからです。

 

だた、意識して大きな声や遠くまで届かせようとすると、このダブル共鳴をつかうことができなくなります。

 

ダブル共鳴を使った歌い方のできる人も、始めからできたわけではなく、練習を重ねる過程で、もしくはなんらかしらのトラブルで声が出なくなった時に、このダブル共鳴のコツを掴んだと思います。

 

このコツを掴んだ人のみが、個性的な歌声を持って多くのファンを掴み、長きにわたり君臨してしています。

 

では、なぜ、多くの人は、普遍的な才能であるダブル共鳴をうまく使いこなせないのか?

 

ダブル共鳴を邪魔する一番の要因となっているのが「腹式呼吸」による発声法だったのです。

腹式呼吸による発声法の罠

人は、「大きな声を声を出そう」とか「遠くまで届けよう」と思って声を出すと体が力んでしまいます。

 

そこで、意図的に行われる腹式呼吸による発声法は、腹筋を(おなかの力み)を利用して息をコントロールして上手く声を出そうとするために工夫された技法なのです。

 

そうすることによって、腹筋以外に力が入らずにすむため声を出しやすくなります。

 

ですが、腹式呼吸による発声法では、人の持つ本来の共鳴のシステムを働かせることができません。

 

なぜならば、息と共に声が流れて声が共鳴しずらくなるからです。

 

もっとも、声が流れても共鳴しないということは考えられないので、体のどこかは必ず共鳴しますが、ダブル共鳴はできません。

 

そうなると、低い音は胸郭、高い音は鼻腔という具合に音の高低によって共鳴する場所が変わります。

 

ボイストレーニングのサイトなどで言われているような、地声、裏声(ファルセット)、ミックスボイスと言った声の分類などは、低い声は胸郭、高い声は鼻腔といった共鳴の仕方を前提にした考え方です。

 

ボイストレーナーや一般的な歌の上手い人の歌う歌が単調に聞こえるのは、腹式呼吸の発声法によるシングル共鳴だからです。

 

ミックスボイス(本当はミドルボイス)というのも、地声と裏声が混ざった声という解釈で言われていますが、本当のところは声帯の締まりが強くなるだけなので、鼻腔共鳴が強くなるシングル共鳴のことだと考えられます。

 

本来、ミックスボイスとは鼻腔と胸郭が同時に共鳴するダブル共鳴のことみたいなのですが、地声と裏声のミックスしたボイス(声)という誤認(誤った認識)のようです。

 

腹式呼吸による発声法では、低い声でも鼻腔共鳴が起こったり、高い声でも胸郭共鳴が起こったりしませんので、このように誤認しても仕方がありません。

 

そもそも、おなかに力を息を出しながら声を出したり、ブレス(息継ぎ)を意識する練習は、腹式呼吸を使って発声することが前提になっています。

 

ですが、このような方法は、人が本来持っているダブル共鳴を使った発声システムを使うことができません。

 

なぜかと言いますと、息と声とでは声帯の動きが真逆だからです。

 

声を出す時には声帯が閉まり、息を出す時には声帯が開きます。

 

このように、脳にプログラムされています。

 

そこで、声を出そうとする時に意図的に腹式呼吸で息を出そうとすると声帯をうまく閉じることができなくなります。

 

なぜならば、息を出す時に働く声帯を開こうとするプログラムと、声を出す時働く声帯を閉じようとするプログラムが同時に作動してしまうからです。

 

これらのように相反するプログラムが同時に働いてしまうのですから、うまく声を出すことができるわけがありません。

 

いわば、ブレーキを踏みながらアクセルを吹かすようなものです。

自身の声を作るためのツール「脱力」

腹式呼吸による発声法を続ければ声帯を始め、さまざまな箇所に負担がかかり身体を痛めてしまいます。

 

私が「腹式呼吸で声を出すべきではない」と考える大きな理由です。

 

本来、身体は、共鳴させて声を増幅させるようにプログラムされています。

 

ですが、「大きな声を出そう」とか「うまく歌おう」という意識が起こるとお腹に力が入ってしまい声の共鳴が作動しなくなります。

 

本当は、本来持っている共鳴システムを発動させればいいのです。

 

ですが、人は分かりやすい力(俗に言う「力み」)を使って物事を行えるように工夫を懲らそうとしまいます。

 

この一つが、ボイストレーニングです。

 

このような不自然な発声を強いられることで「上手いのだけれど単調な歌」しか歌えなくなってしまうのです。

 

さらに、このことで体の一部分に負担がかかり、身体のバランス機能に障害をきたしてしまいます。

 

そうなると、喉を痛めるなどの障害ばかりではなく、声が出なくなるなどのパフォーマンスの低下につながる恐れもあるのです。

【参考記事】輪状甲状筋を鍛えるデメリット

 

ただ、ここで誤解していただきたくないのは、腹式呼吸自体が悪いということではありません。

 

意図的に行う腹式呼吸が身体の発声メカニズムに反していると言いたいのです。

 

息が吸われる時には声を出すことができませんので、声を出す時には必ず息が出るようになっています。

 

その結果、腹式呼吸になる人もいると思います。

 

なので、自然に腹式呼吸になるのであれば問題ありません。

 

しかし、皮肉なもので多くの日本人にとって腹式呼吸は不自然な呼吸です。

 

逆に、日本人以外の多くの外国人は骨盤が前傾しているため呼吸すると自然に腹式呼吸になります。

 

それに対して、多くの日本人は骨盤が後傾しているため、深く呼吸をすると自然に逆腹式呼吸になります。

 

なので、意識しないと腹式呼吸を行えません。

 

ですが、意識して腹式呼吸を練習する必要はありません。

 

なぜならば、声のトレーニング(ボイトレ)と、息のトレーニング(ブレストレーニング)とは、目的が違うからです。

 

息のトレーニングの意義は、身体調整です。

 

このことを履き違えてしまうと、本来持っている声を響かせられるプログラムを作動させることができなくなります。

 

また、人は自分が認識できないことについて知り得ることができません。

 

若いへたウマな歌手の声の分析を行ったボイストレーナーも、若い歌手の声の正体を自分の認識し得る範囲でしか捉えることができなかったように。

 

ですので、我々は、もっと身体についての認識を深めて行く必要があります。

 

このことで、身体に眠る大いなる可能性に気がつくことができるようになります。

  • 外的要因(環境)と内的要因(身体)とのバランス 

ボイストレーニングに限らず、外からの情報が多く取り入れることのできる現在社会、身体にある内的情報を収集する術を身につけることができれば、外からの情報を精査することができます。

 

そうすれば、情報に踊らされることなく、外からの情報を利用して、さらに自身を高め、夢の実現に近づきます。

 

そのために必要なことが「脱力する身体」なのです。