体を柔らかくする方法(伸張反射を利用した開脚ストレッチ)

ストレッチというと「ゆっくりと伸ばす」というイメージが強いかも知れません。

 

ですが、ストレッチには動的ストレッチと静的ストレッチとがあり、ゆっくりと伸ばすストレッチは静的ストレッチになります。

 

以前は、静的ストレッチが広く勧められてきました。

 

それ以前は、反動をつけて伸ばす柔軟体操が主流でしたが、反動をつけることによって筋繊維を痛めることが考えられ、これにより、ゆっくりと伸ばす静的ストレッチが強く勧められるようになりました。

 

これにより、ストレッチによる筋繊維を痛めるリスクは軽減したと考えられます。

 

ですが、静的ストレッチには、ある欠点があることが分かってきました。

 

それは、パフォーマンスの低下です。

 

スポーツなど、瞬発的な動作を必要とすることを行う前、ウォーミングアップの段階で静的ストレッチを行うと筋肉の収縮力が低くなります。

 

なぜなのか?と言いますと、伸張反射という生理的反射を動作に利用できなくなるためです。

 

伸張反射とは、筋繊維が切れないように伸ばされたら縮むようにする反射です。

 

これは、筋繊維を守るためと俊敏な動作を行うために必要な反射です。

 

スポーツのできる人の動きは例外なく伸張反射をうまく利用しています。

 

意図的に筋肉に力を入れるよりも、伸張反射を利用した方が、筋肉の収縮力が高まるためです。

 

そこに静的ストレッチを行なってしまうと伸張反射が鈍くなり、俊敏な動作を阻害してしまうのです。

 

その結果、パフォーマンスが落ちてしまうばかりか、伸張反射が鈍くなることで筋繊維が切れてしまう恐れも考えられます。

 

なので、現在では静的ストレッチよりも動的ストレッチの方を重要視する傾向にあるようです。

 

ただ、数十年も前の反動をつけて行う柔軟体操と言われていた動的ストレッチでは筋繊維を切ってしまうリスクが高いです。

 

では、近年の動的ストレッチと柔軟体操とではどのように違うのでしょう。

 

柔軟体操では、勢いをつけて伸ばした後、伸ばし続けます。

 

最悪なことは、人に引っ張ってもらったり押してもらったりして、伸張反射が働いていることを無視して伸ばし続けます。

 

そうすると、筋肉を伸ばしながら収縮するという筋肉にとって一番負担のかかる状態になり、筋繊維を大きく痛めてしまうリスクが生じます。

 

それに対して、動的ストレッチでは、弾みをつけて伸ばすけれど、伸張反射が働くタイミングで筋肉が縮む力を利用して元に戻します。

 

そう、「伸ばし続けず、すぐに縮める」ことが一番の違いです。

 

このようなことを繰り返すうちに筋肉の柔軟性が高まり、関節の可動性も高まり、その上、瞬発力も高くなります。

 

あと、静的ストレッチでも「伸ばす続ける」ことは筋繊維が切れるリスクが大きいことは意外に知られておりません。

 

静的ストレッチでは柔軟体操ほど伸張反射は起こりませんが、それでも筋繊維の限界を超えるところまで伸ばされると伸張反射が伴います。

 

それにも関わらず、伸ばし続けてしまうと「伸ばしながら縮む」という筋肉にとって一番負担のかかる動きになり、その時に筋繊維が切れてしまいます。

 

なので、ゆっくり伸ばしているからと言って「力いっぱい伸ばす」と伸張反射が起こり、かえって筋繊維にダメージを与え、体を硬くしてしまいます。

相反抑制を利用したストレッチ

私も、以前、開脚を懸命に行なっていた時期がありました。

 

頑張って行なった翌日、例外なく、伸ばした筋肉(ハムストリングス)の突っ張りが強くなり、ひどい時には、痛みで数日間、開脚ができないこともありました。

 

「その時は開脚できても、次の日には痛みと緊張で開脚できない」という状態が何年も続きました。

  

その当時、静的ストレッチで無理なく行なっていれば大丈夫だと思っていたので、不思議でなりませんでした。

 

この時に「静的ストレッチでも限界を超えて伸ばすと伸張反射を起こす」ということを身をもって知ったのでした。

  

この経験から、「なぜ伸張反射が起きてしまうのか?」ということを検証し、2つの理由を導きました。

 

まず、一つは「開脚の動作は人の動作のシステムにない」ということでした。

 

なので、新たな動作のシステムを再構築する必要があると考え、静的ストレッチの改良を思案しました。

 

近年、相反抑制を利用したストレッチが注目されています。

 

これは、伸ばそうとする筋肉と反対側の筋肉を収縮させながら目的とした筋肉を伸ばしていくと目的とした筋肉の緊張が解けて伸ばしやすくなり、可動域を上げるストレッチです。

 

従来の静的ストレッチでは、伸ばそうとする筋肉はもちろんその反対側の筋肉も緩めながら行います。

 

限界を超えない程度のストレッチでしたら問題ありませんが、可動域を拡大を図ろうとすると伸ばした筋肉に伸張反射が起こり、それに抵抗するように伸ばすと筋繊維が切れてしまいます。

 

開脚のように、人の動作のプログラムに組み取られていない動作の場合、伸ばす筋肉に過剰な伸張反射が起こります。

 

例えば、前屈をしようとします。

 

前屈は膝を体幹に近づける動作です。

このような動作では、膝を体幹に近づけると膝を曲げるようにプログラムされています。

 

なぜならば、足をあげるのは地面に足をつけるためだからです。

 

特に、階段など段差のある所を歩く時、膝を伸ばしたまま足を上げたら地面に足をつけることはできません。

 

なので、足をあげる時に膝が曲がった方が都合がいいのです。


このプログラムは、前屈の時にも働きます。

なので、立った状態で前かがみになろうとすると、無意識のうちに膝が曲がります。

 

膝を曲げた方がバランスを取りやすくなるという理由もあります。

 

そして前屈も、膝が体幹に近づける動作となるため、膝を体幹に近づけると膝を曲げるプログラム」が働いてしまいます。


なので、膝を伸ばして前屈しようとするとハムストリングスが収縮し、ハムストリングスが伸ばされながら縮もうとします。

 

体が固いと思っている人が前屈ができないのは、そのためです。

 

なので、膝を伸ばしたまま前屈するためには、「膝を伸ばしたまま体幹を近づける」運動プログラムを新たに脳にインプットする必要があります。

その方法が、相反抑制を利用したストレッチ法です。

 

例えば、膝を伸ばしたまま前屈をしようとする時に伸びてほしい筋肉はハムストリングスです。

 

なので、その反対側の膝を伸ばす筋肉である大腿四頭筋を収縮させた状態で前屈するとハムストリングスを無理なく伸ばすことができます。

 

これは、大腿四頭筋が収縮すると拮抗筋であるハムストリングスが弛緩するという生理的性質を利用したためです。


これが、相反抑制を利用したストレッチ法で脱力クリエイトではパワーストレッチと呼んでいます。

 

運動プログラムは筋肉へ送られる指令信号を記憶することで構築されます。

 

そのため、膝を伸ばしながら前屈を行う時に大腿四頭筋が収縮するというプログラムを新たに構築することができます。

 

そうすれば、ハムストリングスの収縮を抑制され、無理なく前屈を行えるようになります。

 

この方法は、新たな運動プログラムを構築する上で大切だと考えております。

 

ですが、そのまま用いると「力み」を増大させてしまう恐れがあり、脱力トレーニングの原則「骨を中心に体を動かす」ことにも反してしまいます。

 

そうすると、「力み」感覚を作ってしまい、滑らかな動作を阻害してしまいかねません。

 

なので、脱力クリエイトでは「膝(大腿骨と脛骨)を伸ばし続ける」イメージで行います。

 

このことで、自然に大腿四頭筋が使われ「力み」を感じずに筋トレ要素のある無理のないストレッチを行うことができます。

 

この相反抑制を利用したパワーストレッチを実行するようになり、前屈を行った際のハムストリングスの過緊張がなくなり、前屈の可動性も上がりました。

【関連動画】


伸張反射を利用した開脚ストレッチ

ですが、もっと効果的な方法があったのです。

 

それは「伸張反射」を利用したストレッチ方法です。

 

伸張反射とは「伸びたら縮む」という反射で、ストレッチの障害になると考えられる生理的反射です。

 

このように考えれば、関節の可動性が悪くなると思うかも知れません。

 

ですが、筋肉にはもう一つの性質があり「縮めば緩む」という性質です。

 

そう筋肉は「縮めば緩む」のです。

 

意図的に伸張反射を起こすように筋肉を伸ばす動作をします。

 

そうすると、伸ばされた筋肉は伸張反射を起こし強い収縮を起こします。

 

その収縮に合わせて、伸ばされた筋肉を縮めます。

 

そうして縮んだ筋肉は、緩みます。

 

そして、再び伸ばします。

 

このことを繰り返すうちに、徐々に伸ばされた筋肉が緩む、可動性が上がります。

 

それが、伸張反射を利用した開脚ストレッチです。

前屈(ハムストリングスのストレッチ)

開脚ストレッチを行う前に前屈をしてみます。

 

勢いをつけて前屈するとハムストリングスがピーンと張ります。

 

張りを感じたら、すぐに前屈をやめます。

 

そう、伸ばしたらすぐに縮めることが重要です。

 

間違えても伸ばしたままにしないということです。

 

勢いをつけて伸ばして、伸ばしたままにしてしまうと筋繊維を切ってしまうからです。

 

これが以前の柔軟体操の悪害だったのです。

 

なので、動的ストレッチでは勢いをつけて伸ばしたら、伸張反射による収縮力に合わせて元に戻し、それを繰り返すことで少しずつ柔軟性が高まっていきます。

 

前屈する際に伸ばされるハムストリングスに負担がかからないように拮抗筋である大腿四頭筋が収縮した状態が望まれます。

 

このことで、ハムストリングを無理なく緩めることができます。

 

前屈で、ある程度ハムストリングスを緩めてから開脚動作を行うことをおすすめいたします。

【関連動画】


両足合掌(内転筋群のストレッチ)

開脚(横開脚)を行うためには、ハムストリングと同時に内転筋群が緩まなければなりません。

 

とういうことは、内転筋の拮抗筋を収縮させる必要があるということです。

 

そのための動作が、脚合掌です。

両足を合掌するようにします。

 

そうして、大腿骨を下に押し下げるイメージで大腿骨を動かします。

 

そうすると、内転筋の拮抗筋である中臀筋が収縮します。


まず、大腿骨をパタパタと開閉するように上下に動かします。

 

その時に無理に開かずに内転筋が縮んだら、すぐに脚を閉じます。

 

この動作を繰り返すうちに内転筋が緩んできます。

 

両足合掌の状態で骨盤を立てて座れれば「膝(大腿骨)を開き続ける」イメージで上体を素早く倒し、内転筋がピーンと張ったら素早く上体を起こします。

 

この動作を繰り返すうちに前屈ができるようになり、内転筋も緩んできます。

 

前屈と脚合掌を行なってハムストリングスと内転筋群が緩んでから、両足を開いていきます。

【関連動画】

開脚ストレッチ

両足を開いた状態で骨盤を立てることができれば、両足を開いたまま上体を素早く前に倒し、ハムストリングスか内転筋群にピーンと張りを感じたら素早く上体を起こす動作を繰り返す行います。

 

この時は「両脚(大腿骨)を横に開き続けながら両膝(大腿骨と脛骨)を伸ばし続ける」イメージで行います。

このことで、脚を開く中臀筋と脚を伸ばす大腿四頭筋が自然に収縮し、無理なく内転筋とハムストリングスを緩めることができます。

 

このように、伸ばす対象の筋肉を緩めることで開脚動作を可能にします。

【関連動画】

 

前屈や開脚といった運動プログラムにない動作を行う際には、必ず「膝(大腿骨と脛骨)を伸ばし続ける」イメージで行うことが大切です。

 

前屈や両足合掌、開脚ストレッチを行うためには、骨盤を立てた状態で座ることが条件になります。

 

ですが、体の固い人には困難です。

 

なので、体の固い人におすすめしたいのが、この記事のテーマとなっているアクティブ・ストレッチ・エクササイズです。

アクティブ・ストレッチ・エクササイズ

アクティブ・ストレッチ・エクササイズとは、立位の状態で行う動的ストレッチで、体の瞬発性と柔軟性を高めることを目的としたエクササイズです。

 

脱力クリエイトの行う調整動作は静的な動作が多く、リズミカルな動的なエクササイズで補完することで相乗効果を得られます。

 

具体的に述べると

  1. 物を投げる動作
  2. 肘の曲げ伸ばし
  3. 肩甲骨の押し出す動作
  4. モモを上げる動作
  5. 膝を伸ばす動作

の5つの動作です。

【関連動画】

これらの動作を

  • 骨を意識して行う
  • 伸ばしたらすぐに縮める

ように心がけて繰り返し行なっていきます。

 

はじめのうちは素早くする必要はありません。

 

無理をすると筋繊維を痛めてしまいますので、はじめはゆっくりと曲げ伸ばし、慣れてきてから徐々に、スピードを上げていくようにします。

 

そうすることで

  • 関節の可動性を高める
  • 筋肉の柔軟性を高める
  • 瞬発力を高める
  • 心肺機能が高まる
  • 体が温まる

などの効果が期待できます。

 

また、体幹部の動きと連動させるため

  • ウエストが引き締まる
  • 気分転換になる

効果も期待できます。

 

なお、体操やダンスのように振り付けを覚えたり、音楽に合わせる必要がないので、気軽にはじめることができると思います。

【注意事項】

※もし、このアクティブ・ストレッチ・エクササイズや前屈、両脚合掌・開脚などの動的ストレッチは最初はゆっくりした速度で行います。

 

もし、それで痛みが伴うようでしたら、痛みのない程度にパワーストレッチ(拮抗筋を収縮させるストレッチ)を行なってみてください。

 

繰り返すうちに、伸ばしたい筋肉の緊張が解けて、徐々に痛みが少なくなります。

 

そうしてから、ストレッチのエクササイズを行なってみてください。

 

ですが、パワーストレッチを行なっても伸ばしたい筋肉の緊張が解けなかったり、痛みが続くようでしたら整形外科などの医療機関の受診をおすすめいたします。

 

なお、エクササイズにつきましては自己責任でお願いたします。

 

くれぐれも無理のないよう、お願いいたします。