· 

身近にある催眠

催眠というと「あなたはだんだん眠くなる」というイメージが強いかもしれません。

 

このような催眠術は、ショー催眠と呼ばれ、特別感を出すための演出です。

 

実際の催眠術は、もっと地味で、一見すると何をしているのかわからないぐらいだと言われています。

 

催眠とは、意識が狭窄(狭くなる)する状態のことで、変性意識の一つです。

【参考記事】催眠とは(意識が狭窄する変性意識)

 

我々も日常生活の中でよく陥っており、催眠術師の専売特許でもなければ、特別なものでもありません。

 

これは、人間の脳の性質だとも言えます。 

 

日常生活においても、人の脳の性質を利用した催眠術が多く使われています。

 

ですが、そのことに気がつくことなく生活しています。

 

例えば、

  • スポーツ
  • 買い物
  • テレビやスマホ
  • ライブコンサートや集会

などが挙げられます。

スポーツで行われている催眠(フェイント)

以前の記事「武術のカラクリ(催眠という変性意識のトリック)」で武術の技の多くに催眠の技法が用いられていることを述べました。

 

ただ催眠を利用した技は武術の専売特許ではなく、スポーツ、特にコンタクトスポーツなどでよく使われています。

 

そう、フェイントです。

 

フェイントこそが、催眠を利用した技術なのです。

 

フェイントをかけようとする時、本来の目的とは異なることをして相手を紛らわします。

 

例えば、

  • コンタクトスポーツで、進行方向とは逆の方に動こうとみせて抜き去る
  • 球技で、ボールを引きつけてセオリーとは逆方向にボールを打つ
  • 格闘技で、一打を放とうとして打たず、相手がそれに釣られた隙にもう一打を放つ

などです。

 

これらのフェイントは、相手の意識を集めて視野を狭くすることができれば成功です。

 

視野が狭くさせることで死角が増えて、死角の外から躱したり、攻撃しやすくなるためです。

 

そして、視野が狭くなると意識が狭窄した催眠状態になって、その一瞬、思考も停止し、相手の動きが読めなくなります。

 

その結果、体が硬直します。

 

フェイントをかけられた側は、

  • 相手の意図がわからない
  • 相手の動きが見えない

という状態になります。

 

フェイントが綺麗に決まったら、うまく相手を捌いたり、うまく攻撃を加えることができるのは、そのためです。

買い物と催眠

スーパーなどで買い物をすることが多いと思います。

 

安売りセールに合わせて買い物に行かれる方もいらっしゃるかもしれません。

 

でも、買い物を終えて家に帰って

  • これうちにもまだあったんだ

とか

  • あっ、こんなに(お金)使っていた

とか

  • 冷蔵庫がいっぱいで入らない

とかということありませんか?

 

スーパーに行くと、安売りの値札が赤く書かれています。

 

赤は、人の気をもっとも引く色です。

 

もし「これ欲しかった」というものがあれば、その値札に目が凝視し、意識が値札に集中し視野が狭くなります。

 

そうすると、催眠という変性意識状態になりやすくなります。

 

催眠状態では、思考能力が低下します。

 

そうなったら、買うか買わないかの選択をしないまま、買い物かごに商品を入れてしまっています。

 

さらに、売りだし商品の近くには、その売り場とは関係のない商品がさりげなく置かれていたりします。

 

例えば、

  • お肉のコーナーに焼肉のタレ

だったり

  • 野菜コーナーにドレッシング

だったりなど。

 

一見すると全く関係ない商品を置くことで

  • 今日は焼肉にしょう

とか

  • サラダにしょう

というふうに料理がイメージされます。

 

特に、晩御飯のメニューが決まってない時などは、イメージされたやすいです。

 

この料理がイメージされている時には、ウチの冷蔵庫の中に

  • 何が入っている
  • 何が足りない

という思考がなくなっています。

 

そうして家に帰り冷蔵庫に入れようとした時、

  • あっ、〜〜買い忘れていた

とか

  • あっ、〜〜あったんだ

ということになります。

 

このように、必要のないものを買ってしまい冷蔵庫の中がいっぱいで奥に何が入っているのか把握できないと結果になります。

 

このカラクリも、人の催眠に入りやすい性質を利用しています。

 

赤い値札に意識が集中することで、催眠状態に陥ります。

 

そうすると、思考が鈍くなり、お店側によって提案された料理のイメージ通りに買ってしまい、晩御飯のメニューになります。

 

スーパーに行くと、なんとなく買ってしまうのは、そのためです。

催眠に誘導する装置(テレビやスマホ)

何もすることがない時に、何気なく、テレビをみたり、スマホをみたりしたりしていませんか?

 

テレビ離れが進んでいると言われていますが、近年では携帯電話の進歩によりスマートフォンが身近になりました。

 

テレビ離れの背景には、スマートフォンが身近になったこともありそうです。

 

テレビは、その場に行かなければ見ることができませんが、スマートフォンでしたら肩身離さず持ち歩くことができ、どこでも見ることができます。

 

本来、携帯電話なのですが、実際は小さなパソコンで、インターネットを見れたり、動画も見ることができる夢のような世の中です。

 

そのせいなのか、スマホを持ってなかったら不安になったり、落ち着かなかったりする人も多いみたいで、スマホ依存という言葉もあるぐらいです。

 

依存とは、特定の物質や行為を繰り返すことで、それ無しでは生きていけない状態になることです。

 

自制が効かなくなる病的になったものが依存症で、依存症が進行すると自分自身を傷つけたり、周りの人を振り回したり、社会生活が送れなくなることもあります。

 

代表的な例が麻薬や覚醒剤で、あとアルコール依存症とか、ギャンブル依存症や買い物依存(行為依存)などがあります。

【参考記事】人の可能性を奪う変性意識からの脱却

 

そこまで行かなくても、

  • スマホがないと落ち着かない

とか

  • 暇があればスマホを覗いている

という人は多いのではないでしょうか?

 

そのようになる理由が、催眠です。

 

テレビやスマホのような画面を覗く時、視線を凝視させます。

 

視線を凝視すると意識が集中して、意識が狭窄(狭くなる)する催眠という変性意識状態に陥りやすくなります。

 

そして、その画面に夢中になり、テレビやスマホを見ているうちに

  • あれ、もうこんな時間!

と我に帰ったら、かなりの時間を費やしていたことに気がつきます。

 

催眠状態になると、思考能力が低下し、我を忘れた状態になります。

 

特にスマホは、気軽に持ち歩け、画面も小さいので凝視しやすくなり、催眠に陥りやすくなるかめしれません。

 

そして何より、情報が受動的に流れてくるため、その情報を無批判に受け入れてしまう恐れがあります。

 

催眠の状態にある時には、思考を司る大脳皮質の前頭連合野という箇所の働きが弱まります。

 

このことで、思考が弱くなる反面、外からの情報を多く取り入れやすくなります。

 

これは、マインドコントロールを受けやすくなることを意味します。

 

メディアや動画の投稿主の意図が無意識のうちに入りこみ、あたかもそれが自分の考えであるかのように錯覚を覚えることもあり得ます。

 

友人などと話をしていると、

  • 情報が多くて振り回される
  • どの情報が正しいのか悩んでしまう

と耳にしますが、これも催眠による影響なのかもしれません。

集団意識による催眠(ライブコンサートや集会)

人は社会的生き物であり、集団で生活することが前提となります。

 

その中では、自分の意に沿わないことや自分の気持ちを偽ってまで、組織の中に留まろうとしてしまいがちです。

 

その集団に逆らうと集団から切り離されて孤立してしまい、食事や寝床を失い、生活が困窮するという大昔の生活の名残なのかもしれません。

 

なので、本能的に集団の中に所属していると安心感を覚え、孤立することに恐怖を覚えます。

 

集団の中にいると、ある種の一体感を感じます。

 

例えば、アーティストのライブに行くと、アーティストと多くの観客との間に独特の高揚感です。

 

その間、ライブに来た人たちは日常のことを忘れ、その場の一体感と高揚感を楽しみます。

 

そして、ライブが終わると、その熱気が醒め、日常の生活へと戻ります。

 

ただ、それは特定のアーティストによるコンサートだけではありません。

 

会社などで行われるお酒の席もそうです。

 

お酒を飲んで酔いが回ると気持ちが高揚しやすくなります。

 

これは、アルコールによって自意識(顕在意識)が弱くなるためです。

 

普段、緊張して会っている上司や幹部などの人との距離が縮まり、打ち解けやすくなり、ある種の一体感が生まれやすくなります。

 

会社で、歓迎会や忘年会を行う理由は、お酒の席の一体感を利用して団結力を高めるためです。(もっとも、この頃の若い人はお酒を好む人が少なく、個人の世界を大切にしたい人が多そうなので逆効果なのかもしれません)

 

また、会社以外でも、何か同じ目的を持って、同じ事柄(趣味やワークショップ、ボランティア活動など)を行おうとする集会などでも同じようなことが生じます。

 

その時、みんなで共有しようとする意識が強くなり、個々の意識(顕在意識)は弱くなります。

 

そして、独特の一体感とともに高揚感が生まれます。

 

この一体感や高揚感こそが変性意識そのものであり、これも一種の催眠状態です。

催眠に振り回されない生き方

変性意識といっても催眠自体は、日常の生活の中でよく経験しています。

 

例えば、

  • ボーとしている時
  • 考えごとをしている時
  • 妄想を膨らませている
  • 何かに気を取られている
  • 何かに夢中になっている

などです。

 

なので、催眠自体が悪いわけではありません。

 

ですが、この人間の脳の性質を利用されていることも事実です。

 

それも知らず知らずのうちに。

 

特に、そのことが悪いわけではありません。

  • スポーツ
  • 買い物
  • テレビやスマホ
  • ライブや飲み会、集会

も、自分自身が楽しんで行なっていることだからです。

 

ですが、自分の意図しないところ、自分の意思とは反するところで、知らず知らずのうちに誘導されて、お金や時間を浪費させられていることだってあります。

 

タチの悪いケースでは、催眠状態に陥らせて、都合の良いように思考と行動をコントロールしようとする洗脳(マインドコントロール)もあります。

 

【参考記事】身近に潜むマインドコントロールの罠

 

なので、楽しい生活を賢く送るために催眠のカラクリを知り、催眠にかからないようにする方法を知っていても損はありません。

 

そのためには、

  • 身体の軸を作ること

です。

 

身体の軸を作ると催眠状態に陥りにくくなり、仮に陥ったとしてもすぐに我に帰りやすくなります。

 

ただ、身体の軸を作るためには、それなりの訓練が必要です。

 

その他に、日常生活で気をつけると良いことを述べてみたいと思います。

 

まず、

  • 怪しそうな集会には行かない

ことです。

 

人が集まるところでは、無意識のうちにまわりに合わせようとする意識が働くためです。

 

そうなると、自意識が弱くなり、暗示にかかりやすくなり、マインドコントロールを受ける恐れがあるためです。

 

そして、

  • 夜寝る前に、テレビやスマホを見ない

ことです。

 

テレビやスマホから与えられる情報はとても多く、脳がそれを処理するためにフル稼働で働きます。

 

そうすると目が冴えて、眠りが浅くなります。

 

催眠にかかりやすい条件は、体が疲れていることです。

 

睡眠の質が落ちてしまうと、自意識が弱くなり、催眠に陥りやすくなります。

 

そうなると、

  • 内臓の働きが悪くなり
  • 活力が出なくなったり
  • やる気が出なくなったり
  • 日中ボーとする

ことが多くなってしまい、疲労が蓄積して、思考力が弱まり、健康を害します。

 

あと、買い物をする時には、

  • あらかじめ買うものを決める
  • 買うものによってお店を決める
  • 食品のストックを把握する
  • 冷蔵庫の中を整理する
  • 献立を決めてから買い物に出かける

などのことを行うと買い過ぎなどを抑えることができます。

 

そして、

  • 規則正しい生活を送り
  • 物事を整理し
  • 危険な匂いのするところには近づかない

よう心がけることが大切だと思うのです。