溜めのない動作

瞬間動作とは、予備動作のいらないフットワーク法です。

 

人が普段、歩く時には、歩きはじめに予備動作を必要としません。

 

4足歩行の動物と異なり2足歩行の人間は、足で地面を蹴る必要がないからです。

 

なぜかと言いますと、人は二足歩行のため重力の自由落下の力を利用できるからです。

 

自由落下とは、力を加えなくても地面に向かって落ちる働きのことです。

 

この自由落下は、地球の引力(重力)が働いていることで起こります。

 

4足歩行の動物の場合、4本足で身体を支えている関係上、とても安定しています。

 

なので、自由落下の力を利用できず、必ず足で地面を蹴る必要があります。

 

それに対して2足歩行の人間では、2足という不安定な状態で身体を支えているため、身体が傾きやすくなります。

 

このことで、自由落下の力を利用することができ、足で地面を蹴る必要がないのです。

 

実際に多くの人が、普段の生活ではこのような自由落下の力を利用した歩きを行っています。(上手下手はありますが)

 

ですが、

  • 緊張を強いられる時
  • 速く動きたい時

など、どうしても予備動作が生まれてしまいます。

 

それは、なぜなのか?

 

速く動きたい時、膝を曲げて脚の力を出そうとするからです。

 

しかし、そうすると脚の筋力によって身体が安定します。

 

そうすると、自由落下の力を使えません。

 

なので、足で地面を蹴る必要があります。

 

この時に、進行方向とは逆の足に体重を乗せて膝を曲げて蹴る力を増大させます。

 

これが、予備動作になります。

 

この時、

  • 上体を揺らす
  • 上体を落とす(膝を曲げる)
  • 上体を持ち上げる

ようにして体を大きく動かします。

 

このような動作を行うことで、蹴る力が強くなります。

 

ですが、このような予備動作を行えば相手には動きを読まれやすくなります。

 

そして、片足に体重が集中してしまうと一瞬、体が止まってしまいます。

 

このことを武術では「居つく」と言い、忌み嫌われています。

 

武術では、刃物から身を守ったり、多人数から身を守ることも前提になっています。

 

一瞬でも体が止まってしまう事態は、命の危機です。

 

なので、居つく動作にならないように心がけるように鍛錬すると言われています。

 

しかし、このような緊張するような状況では、さらに足に力が入ってしまいます。

 

このことが、居かない動作を難しくしています。

 

平和な世の中になった現在では命の危機に陥ることはなくなったので居かない動作は武術家よりもむしろスポーツ選手の方が必須かもしれません。

 

しかし、一般的な生活を送っている我々にとっても、この居つかない動作「瞬間動作」は覚えておいて損はありません。

  • 「何かを取り掛かりたい」

と思っているけれど、

  • 「腰が重くて実行できない」

などのことを経験したことはありませんか?

 

瞬間動作の利点は、

  • 体を楽に動かせる
  • 心のフットワークが軽くなる
  • 物事の取り掛かりが早くなる

などがあります。

 

身体的に行えることは心理面に反映されるからです。

 

なので、実生活で「瞬間動作」を使う機会がなくても心理的に効果には大きなメリットがあると思うのです。

 

では、瞬間動作の原理を述べていきたいと思います。

 

瞬間動作を行うポイントとなるのが、

  • 背骨の動き(身体の軸)

  • 踵(かかと)
  • 股関節

です。

 

ここでは、踵の使い方について説明いたします。

 

人が立つ時、足の裏全体で体を支えています。

 

動き出す瞬間、片足の踵に体重を集めます。

 

スポーツを行っている人は「つま先立ちをした方が機敏に動けるので?」と思うかもしれません。

 

ある一定のレベルに至らない方々にとっては、その通りです。

 

しかし、つま先立ちでは瞬間的に出せる力が弱いため、一定以上のレベルでは対応できなくなります。

 

つま先立ちでも大きな力を出せるため行うのが、予備動作です。

 

ですが、予備動作があれば相手に安易に予測されるため、高いレベルでは通用しなくなります。

 

これらの問題をクリアーするために必要なアイテムとなるのが「踵」なのです。

 

体を動かす瞬間に、片足の踵で身体を支えるようにします。

 

ですが、踵に全体重を乗せると意味ではありません。

 

我々が2本足で立つとき、つま先に体重をかけて体を支えて安定させています。

 

踵に体を乗せることで、つま先に働いていたロックを解除されます。

 

そうすると、体幹が前に倒れようとします。

 

これが自由落下です。

 

この力を使えば地面を蹴る予備動作が必要がなくなります。

 

ですが、背骨主導の動きができなれば自由落下の力を利用できないので「背骨トレーニング」が必須になります。

 

しかし、そのまま体幹を倒してしまうと体も倒れてしまうので動作どころではありません。

 

そして、体幹の自由落下の力だけでは不十分なので踵で身体を支えると同時にもう一方の足を前に出します。

 

このことで、倒れてしまうことを防ぐの同時に、自由落下の力を増加させることができます。

 

この時、重要となるのが股関節の動きです。

 

股関節を固めるような動きが定着してしまっている人は、「瞬間動作」を行おうとするとぎこちなくなくなります。

 

予備動作を行っている人は、股関節を固める癖がついているからです。

 

そのため、瞬間動作を行うためには、股関節を固める癖をなくすことが必須なのです。

溜めのない動作(動画)