ミックスボイスと腹式呼吸(ボイストレーニングの罠)

  • 歌が上手くなりたい!

と思い、

  • ボイストレーニングと思っているあなた

ちょっと待ってください。

 

もし、

  • 上手くなりたい
  • 上手いと言われたい
  • カラオケでしか歌わない

のであれば、ボイストレーニングいいかもしれません。

 

ですが、

  • プロの歌手になりたい
  • 魅力的な声を手にしたい
  • 生演奏で歌う機会がある

のであれば、ボイストレーニングはおすすめできません。

 

ボイストレーニングで鍛えられた声は綺麗ですが個性がありません。

 

ただ、綺麗な声は嫌われないですが、好かれることもありません。

 

誰の心にも引っかからない声です。

 

クセのある声は、嫌われてしまいがちです。

 

ですが、人はクセのある声に強く惹かれます。

 

その証拠に熱狂的なファンを持つアスリートほどアンチも多いでしょう。

 

なので、ファンを作りたければアンチを恐れないことです。

 

そうすれば、個性を大切にできると思います。

 

ボイストレーニングによって光る原石が輝きを失ってしまったケースもあります。

 

数年前、ラジオのローカル番組を聞いていた時の話です。

 

この番組のパーソナリティが推していた10代のシンガーの歌を流していました。

 

とても魅力的な声をした少女でした。

 

ただ、声が細いのが難点だったみたいで、声を太くするためにボイストレーニングの先生を勧めたと自慢げに話していました。

 

それを聞き

「わっ、やっちまったよ。こいつ」

と思いました。

 

以前、知り合ったスカウトをしている人から、

「ボイトレしていると個性がないから、スカウトされない

と言うことを。

 

その後、動画サイトで最近のシンガーの歌声を聞くと

「やっぱり、声の通りが悪くなっている」

「あと、声が単調になっている」

ことなどに気が付いたのです。

 

たしかに、声が太くはなった感じはしましたが、肝心かなめの個性が見事に失われてしました。

 

声を太くすることは大切です。

 

ですが、それ以上に個性を磨くこと。

 

歌手を目指すためには大切なことです。

 

才能がある人は「レコーディングを重ねるごとに上手くなる」と言っている人もいます。

 

ですが、いくら才能があっても才能を潰すようなトレーニングを行ってしまったら誰からも見つけてもらえなくなります。

 

このように、ボイストレーニングによって個性が失われてしまうことが、前途有望だった人間の可能性を潰してしまうのです。

 

ただ、才能がありさえすれば、スカウトされるとは限りません。

 

運も必要になります。

 

ましては、ヒット曲を出せるのはほんの一握りの人だけでという狭き門です。

 

しかし、ボイストレーニングを熱心に行えば、スカウトされる可能性すら失われてしまうのです。

 

では、ボイストレーニングの何が悪いのか?

 

それは、ボイストレーニングで当たり前のように行われる

  • 高音(ミックスボイス)重視
  • 腹式呼吸による発声

の練習です。

 

これらのトレーニングを行うことで、歌は上手くなりますが、声に個性がなくなります。

 

歌手を目指す人にとっては、百害あって一利なしです。

ミックスボイスの練習の問題点

ミックスボイスとは高い音色と低い音色が混ざった声のことを言うそうです。

 

ですが、ボイストレーニングでは地声と裏声の中間の声だと言われています。

 

これは、おそらく高音域と中低音域の中間の声(ミドルボイス)のことをミックスボイスと解釈しているからだと思います。

 

そして、このミックスボイスは、地声と裏声が混合(ミックス)した声とされています。

 

動画サイトのボイストレーナーは、解剖学の知識を使い、あたかもそれが真実であるかのように説明しています。(ちなみに、このことを疑似科学と言います)

 

実際は、発声のメカニズムについては不明な点が多く、まだ解明されていません。

 

地声が裏返るポイント(喚声点)を境に地声と裏声が入れ替わると言われていますが、地声と裏声の定義すら曖昧です。

 

もし、喚声点があるのならば、地声を出すシステムと裏声を出すシステムが同時に働くはずがありません。

 

これが、ボイストレーニングで言われているミックスボイスの矛盾です。

 

なので、地声と裏声がミックスされることはないと考えた方が素直です。

 

ここで簡単に、声帯の働きについて簡単に書きます。

 

声帯では、声の基になる音が作られます。

 

この基になる音は、声帯の間を通る空気の流れによって声帯が振動することによって生まれます。

 

声帯には、甲状披裂筋と輪状甲状筋という声帯の厚さと張りをコントロールする筋肉があります。(実際はこの2つの筋肉だけ声帯を動かしているわけではありません。)

 

甲状披裂筋という声帯の周りについている筋肉は、声帯の厚さをコントロールすることで振動の仕方を変えます。

 

この筋肉が働くことで声を太くしたり、ビブラートを多くしたりすることで、声を豊かにします。

 

そして、ボイストレーナーの好きな輪状甲状筋です。

輪状甲状筋という筋肉は音程をコントロールする筋肉です。

 

輪状甲状筋が強く働くと甲状軟骨が傾き声帯が引き伸ばされます。

 

声帯が引き伸ばされると声帯が細くなって張りが強くなります。

 

そうすると声が高くなります。


ボイストレーニングでよく行われているミックスボイスのトレーニングは、輪状甲状筋を鍛えてることで声帯を引き伸ばす力をつけて高音域を広げようというトレーニングです。

 

このような発声法では、甲状披裂筋をはじめとする声帯の形を変えるための筋肉が過度に伸ばされれてしまい身動きが取れなくなります。

 

そうすると声帯の厚みなどをコントロールできなくなり、声質が単調になってしまいます。

ギターのような弦楽器で細い弦で高い音を出そうとする時、キンキンとした余裕のない響きの軽い音になると思います。

 

声帯を過度に引き伸ばした声とは、まさしくこのような声です。

 

輪状甲状筋を多用するような発声を繰り返していると、甲状披裂筋が過緊張によって高音域の声が出なくなる恐れがあります。

 

これは、過伸展された甲状披裂筋が伸張反射を起こしてしまうからです。

 

伸張反射とは、筋肉が伸ばされると縮めることで筋肉や組織が切れるのを防ぐための生体防御ための反射です。

 

なので、脳でコントロールすることができません。

 

甲状披裂筋の緊張が強くなっている時に頑張って声を出そうとしてしまうと、伸張反射によって甲状披裂筋の過緊張が強くなり、がえって声が出しにくくなります。

 

プロの歌手の中にも年齢と共に声が出なくなる人がいるのは、輪状甲状筋を多用して高音域を出そうとしている人です。

 

カラオケプレーヤーはそこまで頻繁に歌を歌うこともないので問題ないかもしれませんが、声を酷使するプロの歌手にとっては死活問題です。

 

ボイストレーニングで行われている輪状甲状筋を意識した高音域重視のミックスボイスのトレーニンによって「声が出なくなってしまう」という最悪な結果も想定できます。

【関連記事】輪状甲状筋を鍛えるデメリット

腹式呼吸による発声がダメな理由

よく、

  • おなかから声を出そう

とか、

  • 腹式呼吸で

と言われています。

 

ですが、これらのことを真に受けると大変なことになってしまいます。

 

もちろん、声を出すために息を出さないといけないので呼吸は大切です。

 

ですが、声を出す時に息を意識すると、かえって思ったとおりに声が出なくなります。

 

なぜかと言いますと、息を出す(呼吸)時と声を出す(発声)時とでは、声帯の形が違うからです。

 

息を出す時、声帯は大きく開きます。

 

それに対して、声を出す時、声帯は締まります。

これらは、人体のシステムに組み込まれています。

 

なので、声を出そうとしている時に呼吸を意識してしまうと、声を出すための声帯を開くシステムと、息を出すための声帯が閉じるシステムが同時に働くことになります。

 

そうなってしまうと声帯の厚さをコントロールしている甲状披裂筋がうまく動かすことができなくなります。

 

その状態で声を出そうとするならば、息の速度をコントロールして音を変えるほかありません。

 

なので、腹式呼吸で息の速さをコントロールしようとしてしまいます。

 

そうなると、鼻腔や胸郭などの共鳴腔で声を共鳴させられなくなります。

 

共鳴腔で声を共鳴させるためには、

  • 声を前に出さない

ことが大切です。

 

もし、

  • 声量を上げるためには声を出さなければならない

と思っているのであれば、それはボイストレーニングの罠です。

 

民謡などでは、ロウソクの火を口元に置き、ロウソクの火が揺れないように歌う練習をしていたと言われています。

 

いっけん、意味のない練習のように感じるかもしれません。

 

しかし、これは共鳴腔で声を共鳴させる感覚を身に着けるための練習だったのです。

 

声を前に出して歌うとロウソクの火が揺れてしまいます。

 

声の通りを良くするためには、声は前に出してはいけないのです。

 

声を前に出してしまうと鼻腔と胸郭で共鳴を起こしにくくなるからです。

 

共鳴できない

声量が上がらない

おなかに力を入れて

息を強く吐き出す

口から外へ音が流れる

共鳴腔で音が増幅されない

声量が少ない

共鳴できない

 

という悪循環に陥るためです。

 

共鳴腔に音を留まらせるためには、声を外に流さないようにしなければなりませんが、腹式呼吸による発声法では、息の量で声をコントロールしようとしてしまうため、どうしても声が前へ流れてしまいます。

 

共鳴を利用することで複雑な声を作り出すことができるのですが、声が前に出てしまうと共鳴できなくなるため声の質が似通ってしまい、ワンパターンな声になります。

 

これらのことが、腹式呼吸の発声法によって個性がなくなる大きな理由です。

倍音を使い高音域を出すテクニック

長年、活躍しているアーティストの多くは、声帯だけで声をコントロールしようとしていません。

 

年を取っても芯のある高音を出すことができ、年齢を重ねるごとに歌に深みが増すように感じます。

 

それに対して、芯のある高音を出せない人は、早いうちに引退しています。

 

年齢と共に高音域が出にくくはなっている感はありますが、輪状甲状筋の負担を軽減する工夫をしているように感じます。

 

さらに、長年活躍しているアーティストの声は、声を聞いただけで「○○だ」とすぐにわかる

個性的な声の持ち主です。

 

なぜかと言いますと、輪状甲状筋を多用する歌い方をしていないからです。

 

腹式呼吸で発声したり、輪状甲状筋を多用したりする歌い方ではそうななりません。

 

腹式呼吸による発声も輪状甲状筋を多用した発声も甲状披裂筋に過度に負担がかかり、声帯が余裕を持って動かせないからです。

 

輪状甲状筋はただ音程をコントロールすることに専念させるべきです。

 

そうすれば、甲状披裂筋に余裕が生まれ、声帯の厚みをコントロールして表現を豊かにすることができます。

 

では、

  • 高音域を出す時、どのようにするのか?

と疑問に思うかもしれません。

 

実は、倍音を使って高音域を出しているのです。

 

倍音とは、一つの音の周波数に対して、その2倍以上の周波数の音が混ざった音のことです。

 

ちょっとわかりずらいので、

 

例えば、ド(C )の音を共鳴腔に共振させると共鳴腔の中で1オクターブ高いド(C)の音が作られ、これを2倍音といいます。

 

さらに、ドの音が共鳴腔の中で1オクターブと完全5度高いソ(G)の音が作られ、これが3倍音です。

 

4倍音は2オクターブの音、ド(C)

 

5倍音は2オクターブと長3度の音、ミ(E)

 

といった具合に、ド(C)という基になる音に2倍、3倍、4倍、5倍(整数倍)などの周波数の音が混ざった音のことです。

 

ちなみに、ド(C)の和音は、ド(C)・ミ(E)・ソ(G)ですので、ドの和音の構成音がドの倍音だということに気が付くと思います。

 

また、同じド(C)という音でも楽器によって音色が違います。

 

これは、楽器によって生じる倍音の種類が違うからです。

 

人の声も同じで、鼻腔や胸郭などの共鳴腔に共振(響いた)した音が、共鳴腔で共鳴することで倍音が作られているのです。

 

そして、倍音を使えば、輪状甲状筋を酷使しなくても高音域を出すこともできます。

 

例えば、プロの歌手のように歌いと思い練習するけれど、同じ高音域で歌えても

  • なんか違う

とか

  • 自分の声が軽く聞こえる

などと感じがことはありませんか?

 

このような声は、高いけれど芯がある太い声です。

 

この時、基音(基の音)に1オクターブ上の倍音を作られています。

 

これが、プロの歌手が実践している倍音を使った高音域を出す声のメカニズムです。

倍音を生むダブル共鳴と脱力

プロの歌手の歌声を聞いていると、中低音域の声と高音域の声の音色があまり変わらないことに気が付きます。

 

低い声でも高い声の要素が混ざっていたり、高い声の中に低い声の要素が混ざっていたりします。

 

倍音を作り、一定の音色になるように声をコントロールしているのでしょう。

 

このことを可能にするのが鼻腔や胸郭を同時に共鳴させるダブル共鳴です。

 

その前に、共鳴について説明したいと思います。

 

まず、音とは振動した空気の波のことです。

 

共鳴とは、振動した空気の波が閉ざされた空間で反射をし続けてることで音が増幅される現象です。

 

そして、狭い空間で共鳴すれば高い音、広い空間では低い音が共鳴しやすいという性質があります。

 

人の身体にも空洞があり、それが、鼻腔、口腔、喉頭、気管、あと胃や腸です。

 

喉頭には声帯があり声の基になる音を作り、口腔は複雑な声を作るために必要な空間ですが、これらは声を作る際に空気が外へ勢いよく流れるため音が反射せず共鳴させられません。

 

あと、胃や腸は柔らかい器官に囲まれているため空気の振動が伝わると考えられません。

 

なので、共鳴に使われるのは、硬い組織に囲まれている鼻腔と胸郭(正確には胸郭の中にある気管)ということになります。

 

空間が狭い鼻腔に高い音が共鳴し、空間が広い胸郭(気管)に低い音が共鳴すると考えられます。

 

そして、人の声は本来、鼻腔と胸郭(気管)との共鳴が同時に起こるようになっています。

 

このことで、倍音が作られます。

 

これが、鼻腔と胸郭が同時に共鳴するダブル共鳴です。

 

ダブル共鳴による発声法では、低い音色(ねいろ)が基音になって高音域を倍音によって響かせています。

 

そして、中低音域でも声がこもらないように高い音色(ねいろ)の倍音を響かせています。

 

鼻腔と胸郭は、人であれば誰もが持っているものですので、これらの空洞を有効に使える身体にすれば、誰でもダブル共鳴を使い倍音を出せるようになるのです。

 

しかし、人が何か動作を行おうとする時、無意識のうちに力を入れてしまっています。

 

これを俗に「力み」と呼びます。

 

もし、

  • 高い声を出そう
  • 声を届かせよう
  • 聞いてもらおう

という思い」とは裏腹に

  • 高い声が出ない
  • 思いが届かない
  • 聞いてくれない

といった逆の結果になってしまうのでないでしょうか?

 

それは、声を出そうとして「力んでしまう」からです。

 

人は「力んで当たり前」ということが前提にあるのがボイストレーニングのトレーニング法です。

 

なので、必要な筋肉だけを使い、必要のない筋肉をリラックスさせようという考えです。

 

例えば、

  • 腹式呼吸はおなかに力を入れて、あとはリラックス
  • 輪状甲状筋を鍛えて、あとはリラックス

というように。

 

しかし、

  • 意図的に筋肉を収縮させようとしてしまうと全身の筋肉が収縮してしまう

という筋肉の性質をボイストレーナーは知りません。

 

ボイストレーニングに限らず、筋肉重視のトレーニング法は全身の力みを生み、その結果パフォーマンスを低下させてしまいます。

 

このことを、知る必要があります。

 

人には本来、倍音を使って声を響かせる「ダブル共鳴」というシステムが備わっています。

 

このシステムを起動させるために必要なことが「脱力」なのです。