脱力動作法(合気上げ)で得られること

  • 慢性的な腰痛に悩んでいる 
  • 介護に携わっている 
  • 合気上げをマスターしたい

方へおすすめしたいのが、脱力動作法です。

 

腕の脱力トレーニングとは、武術の技である「合気上げ」の原理を利用した「物を持ち上げる」脱力動作のトレーニングです。

 

ただ、誤解のないように最初にお伝えしなければならないことがあります。

 

腕の脱力トレーニングは、武術ではありません。

 

そして、私自身、武術を嗜んだことはありません。

 

脱力する身体を作る脱力調整を行う者です。

 

合気上げという不思議な技と出会い、

 

この原理を知りたくて数年の歳月をかけて考察を重ねて、

 

「合気上げとは、物を持ち上げる動作の原理そのものだ」ということに気が付いたのです。

 

重い荷物を運ぶ仕事や介護などに携わっている方の多くは腰痛が職業病となっています。

 

なぜなのか?

 

人が何か動作を行おうとする時、無意識のうちに力を入れてしまっています。

 

これを俗に「力み」と呼びます。

 

もし、

  • 力を出そう
  • 頑張ろう

という思い」とは裏腹に

  • 力負けする
  • 踏ん張りがきかない

といった逆の結果になってしまうのでないでしょうか?

 

それは、力を出そうとして「力んでしまう」からです。

 

人には本来、骨の垂直抗力を使って力を伝える身体動作システムが備わっています。

 

このシステムを起動させるために必要なことが「脱力」なのです。

 

合気上げのメカニズムを解明することで、骨の垂直抗力を使う身体システムを見出すことができました。

  • 重い荷物を運ぶ
  • 仕事や介護などに携わっている

ようなお仕事に携わっている方々に大きく貢献できると考えています。

 

骨の垂直抗力を利用する「身体動作」システムを起動させる身体を作る!

 

このことが、腕の脱力トレーニングの目的です。

物を持ち上げる秘訣は肘にあり

合気上げの原理を解明する過程で、

 

「物を持ち上げる」ことは?

 

について考える機会を持ちました。

 

そこで、物を持ち上げるために必要なことに気が付いたのです。

 

合気上げの原理は、腰より高いものを持ち上げる動作の原理を技に応用したものです。

 

この原理は、身体のテコを利用することです。

 

ですが、生理学的に言われているテコでは合気上げを実現することはできません。

 

なぜならば、生理学的に言われるテコは第3のテコだからです。

 

第3のテコは、支点と力点との距離が作用点より近いテコで、物を大きく、速く、遠くに動かすためのテコです。

 

そのため、力を出すのには適していません。

 

合気上げという技は相手の予測を外す技ですが、同時に小さな力、小さな動きで大きな力を出す技でもあります。

 

なので、これを実現するためには、

  • 第2のテコ(支点と力点との距離が作用点より遠い)

または

  • 第1のテコ(支点が力点と作用点の間にある)で支点ー作用点より支点ー力点が遠い

である必要があります。

 

物を持ち上げる動作は、肘を下げることで物を持ち上げる構造ですので、第1のテコが適しています。

 

このように考えると、持ち手の手前を支点、持ち手の先を作用点になり、肘が力点になります。

 

解剖生理学的には、腕を曲げる運動は肘の関節を軸に動く第3のテコになります。

 

ですが、人が動作を行う時、多くの関節を軸に多くの骨を動かしています。

 

そして、肘を下げる動作は、肩関節と肩甲骨、肋骨、背骨などが連動して動くことで行われています。

 

これらの関節と骨を動かすことで、肘を下げることが可能です。

 

持ち手の手前を支点に先を作用点にして肘を下げると反対に持っている物が持ち上がります。

 

肘が下がると上腕二頭筋が働き肘が曲がります。

 

そうすることで、物を身体の近くに引き付けつつ持ち上げることができます。

 

これが、物を持ち上げる動作の原理です。

体に引き寄せる理由

基底面に物を引き寄せることで、物の重量を身体の重心の下に置くことができます。

 

基底面とは、体を支える面のことであり、立っている時は足の裏とその内側の地面、座っている時はおしりの下です。

 

体の重心が基底面の外に出ると転倒します。

 

ちなみに歩くこととは、体の重心を基底面の前に出し続けることです。

 

しかし、それだと転倒してしまうので、足を前にだすことで転倒することを防ぎます。

 

これらのことを続けることが歩行です。

 

そして、物を持ち上げる動作とは、体の基底面の外にあるものを基底面に引き寄せるという動作です。

 

ですが、体の基底面の外にあるものを持とうとすると体の重心が体の基底面より出てしまい物を持ち上げることができません。

 

そこで、持ち上げようとする物の重量を0にする必要があります。

 

そのために行うのが、物に上向きの力を加えてみせかけの重量を0にする肘を曲げて持ち上げる動作なのです。

腰を落とす理由

しかし、これでは自分の腰より上の物を持ち上げることができますが、腰よりも下の物を持ち上げることは不可能です。

 

なので、腰より下にあるものは膝を曲げて体を低くする必要があります。

 

物を持ち上げる時に「腰を落とせ」と言われる理由は、持ち上げるものよりも腰を低くして「物を持ち上げる原理」を使おうとするためです。

 

しかし、物が地面に置かれている場合、その物より腰を下げることは不可能です。

 

その時には腕を曲げるのではなく曲げた膝を伸ばすことで物を持ち上げることができます。

 

脚の力は腕よりも強いからです。

 

この時、持ち上げようとする物に体を近づけるために膝を曲げます。

 

そして、膝を伸ばすと物が体の重心(骨盤)に引き上がります。

 

そこから、さらに上に挙げたい時には、肘を曲げて持ち上げます。

 

これが効果的に「物を持ち上げる」ための動作です。

脱力動作法で得られること

  • 肘を曲げる
  • 体に引き寄せる
  • 腰を落とす

これらの動作は、物を持ち上げる上で基本的な動作です。

 

ですが、日常動作において忠実に行っている人は少ないのが現実です。

 

しかし、これらの動作を意識して行うことは容易ではありません。

 

さらに、便利な道具や機械がある現代社会では仕方がないことだと思います。

 

重たい物であれば腰を落とさなければ持ち上げることなどできませんが、それほど重たくないものでしたら、身体の使い方を横着してしまうのが人というものです。

 

その結果、身体に負担を強いることで負担が蓄積します。


腕が痛くなったり、腰が痛くなったり、膝が痛くなるのは、そのためです。

 

それに、何か行わなければいけない時にいちいち体の使い方など意識する余裕などありません。

 

さらに、身体(特に体幹部)の動きが悪くなってしまったら、横着して、体に負担のかかる動作を取ろうする悪循環に陥ります。

 

この悪循環を断つのが、「脱力」です。

 

「脱力する身体」を手に入れることで、身体の構造に従った動作を行いやすくなります。

 

そして、脱力動作をマスターすることで、さらに脱力して、身体に負担のかからない、かつレベルの高い身体動作を手にすることができます。

 

このことで、

  • 重い物を楽に持つことができる
  • 介護などのストレスの軽減
  • 穏やかな心を手に入れる

ことができるようになります。

 

身体の構造に沿った動作を行えるようになると身体にかかるストレスが軽減されます。

 

そうしたら、精神的なストレスまで軽減されます。

 

なぜならば、人の心は体の状態に依存するからです。

 

このように、脱力トレーニングを行うことで身体的なストレスから解放されると同時に精神的なストレスからも解放されると考えております。