「ヘタうま」が実践している声の共鳴

ボイストレーニングのサイトや動画を見ると、

  • 声を張り上げてはいけない
  • のどを締めないように歌う
  • 鼻腔共鳴を効かせて歌う
  • 地声(チェストボイス)、ミドルボイス、裏声(ファルセット)を使い分ける
  • ブレスをしっかり行う
  • 姿勢を正す
  • 息を流す量を調節しながら歌う

などのことが重要視させています。

 

ですが、これらは「声の共鳴」を利用した発声法においては、必要ありません。

 

なぜか?と言いますと、これらのことは腹式呼吸による発声法を行う上で必要であるだけで、声を出す(歌を歌う)ために必要ではないからです。

 

むしろ、このようなことを気にしていたら歌を表現する意識が薄らいでしまします。

 

もし、あなたが、人の心に響かせる歌声を手に入れたいと思うのであれば、人の心に響くための工夫に時間を費やす方が建設的です。

  

では、共鳴を利用した発声法を行うために必要なこととは?

声を前に出してはいけない

共鳴を利用した発声法を行う上で重要なことが声を前に出さないようにすることです。

 

「声を前に出さないでどうして声を出すの?出せないでしょう」と思われるかもしれません。

 

ですが、日常生活で会話をする時、声を前に出すように話をしていますか?

 

もし、このような話し方をしているとすれば、とても騒がしく思われてしまうでしょう。

 

ただ、相手に届かせようとして大きな声を出そうとする時、大声を出して、懸命に声を前に前に出そうとしてしまいますが、それとは裏腹に相手に届かず、喉を傷めてしまいます。

 

人の声は身体の構造上、遠くまで届くようにできています。

 

遠くまで届かせるためのシステムが共鳴なのです。

 

ですが、せっかくの共鳴のシステムも息を前に出すような声の出し方をしてしまっては作用しません。

 

なぜなのか?と言えば、息を前に出してしまうと空気の流れが速くなり音が身体に残らないからです。

 

音が体に残らなければ、身体の中で音を共鳴させることが出来ません。

 

なので、息を前に出さないように工夫をする必要があります。

 

昔、民謡を練習する時、火のついたロウソクを前にして歌い「火がぶれないように心がけた」という話を聞いたことがあります。

 

これこそが、共鳴を使った発声をマスターするための先人の知恵だったのです。

身体のシステムを邪魔する腹式呼吸での発声法

ボイストレーニングでは、ブレス(息継ぎ)や息の量を調節するようにと言われるみたいですが、歌を歌うことが声を出すことだとすれば息を意識することはナンセンスです。

 

なぜなのかと言いますと、息を吐く時と声を出す時とでは

  • 声を出す時に声帯が閉じ
  • 息を出す時には声帯は開く

と言った具合に、声帯が違う動きをするからです。

 

このように、脳にプログラムされています。

 

息を出そうとすると声帯が開くプログラムが稼働します。

 

ということは、腹式呼吸で発声しようとすると息を出すために声帯が開くプログラムと、声を出すために声帯が閉じるプログラムが同時に働いてしまうことになります。

 

高音域の声を出したいけれど声がかすれてしまうのは、がんばって息を出そうとして上手く声帯を閉じることができないからです。

 

特に、おなかから息を吐きだす腹式呼吸の動作は気管に入ったものを吐き出す咳やくしゃみと類似します。


これは、危険回避のために一時的に声帯を閉じて気圧を高めることで開いて空気を瞬時に強く押し出す働きです。

 

この時、表層の腹筋が強く働き、前かがみの姿勢になります。

 

腹式呼吸で行う発声法で姿勢を正すことが強調されるのは、おなかの筋肉を使って息を吐くと前かがみの姿勢になってしまい息が続かなくなるためです。

 

このような理由から、発声で呼吸を意識するのは脳のプログラムに反していると考えられます。

 

ですので、呼吸を意識すればするほど声が出なくなるという悪循環に陥ってしまうのです。

 

もしかしたら、訓練することで息の量をコントロールしながら声帯の締め方をコントロールできるように脳のプログラムを書き換えることはできるのかもしれません。

 

ですが、このようにプログラムを書き換えてしまうと、息を吸うことも意識しなければならなくなります。

 

なので、ブレス(息継ぎ)が大切になってしまうのでしょう。

 

ですが、元々備わっているシステムをフルに利用できれば、ブレス(息継ぎ)は必要ないのです。

 

なぜかと言いますと、声を出すことをやめれば伸展した横隔膜(筋肉)が伸張反射によって収縮し、息が勝手に自然の入るからです。


そして、声は声帯ではなく口腔で作られます。


なので、息をコントロールして音を出そうと頑張る必要もないのです。

 

身体に備わっている脳のプログラムをフルに活用すれば、息の量を調節することも、息継ぎを意識する必要もありません。


これが、腹式呼吸の発声法がいけない大きな理由です。

声の原理

ここで、声が作られる原理を簡単に説明したいと思います。

 

まず、声帯を閉じることで空気の流れを速くして声帯を振動させて音を生み出します。

 

ですが、この音では言葉になりません。

 

この音を声に変えるのが口腔(口の中)です。

 

このような考えは、「聞いたことがない」と思うかもしれません。

 

試しに、口を閉じて声を出してみてください。

 

声になりますか?

 

ならないと思います。

 

あごと舌を連動させて動かすことではじめて声になるのです。

 

ですが、これだけで外に声を出すことはできません。

 

声を外に出すために必要なのが共鳴です。

 

共鳴とは、閉ざされた空間にある空気を振動させて生じた音を、閉ざされた空間の中でぶつかり合わせることで増幅させて外に伝播させる現象です。

 

人が共鳴を起こすと考えられる箇所はいくつかあり、例えば、胸郭(正確には気管)、喉頭(のど)、口腔(口の中)、鼻腔(鼻の奥の空洞)などです。

 

ですが、

  • 喉頭(のど)で声帯を締めて空気の流れをコントロールして基音を作る場所
  • 口腔(顎と舌、唇)で複雑な音(声)を生み出し倍音を作る場所

であるため、空気が流れるため共鳴を起こさないと考えられます。

 

このように考えると、胸郭と鼻腔が共鳴させる場所に限定されます。

 

閉ざされた空間が広いほど音は低くなり、狭いほど音は高くなります。

 

空間的に広いのは胸郭(気管)で、狭いのは鼻腔ですので、胸郭で起こる共鳴は低い音、鼻腔で共鳴するのは高い音になります。

 

このように、人の声は胸郭と鼻腔の共鳴が同時に起こるようにプログラムされています。

ダブル共鳴を利用する脱力発声法

そして、このプログラムをうまく作動させて心に響く歌を演出していたのが、「へたウマ」な歌手だったのです。

 

本来、誰もが持っている機能のはずなのに、どうして一握りの人にしか体現できないのでしょう?

 

人は、懸命に行おうとすると「力を入れなければ」と思ってしまうものです。

 

歌でしたら、

  • 声を届かせよう

とか、

  • 声量を上げよう

として無駄な力を入れてしまいます。

 

この最たるものが、おなかが「力む」腹式呼吸による発声法なのです。

 

「ヘタうま」の歌手は例外なく、無駄な力を入れずに脱力して歌っています。

 

なので、鼻腔と胸郭のダブル共鳴を駆使した通る声と共に表現力豊かな声を醸し出すことができるのです。

 

もし、あなたが

  • 表現力のある声を作りたい!

と思っているのであれば、腹式呼吸をやめることです。

 

腹式呼吸による発声法をやめることで、無駄な力がぬけて、身体に備わっている鼻腔と胸郭のダブル共鳴を奏でるシステムを作動させることができるようになります。