合気上げの破り方(物を持ち上げる動作とは)

以前、合気上げという武術の技について記事「合気上げの原理」を書きました。

 

今回は、合気上げがどのような条件で成立するのか?

 

ということについて書いていきたいと思います。

 

この考察は、合気上げという技から「物を持ち上げる動作の原理」を知り、

 

日常行われている物と持ち上げるという動作がどのようなどのような条件であれば行え、なぜ条件を満たさなければ行うことができないのか?

 

ということを考察することで、身体に負担のかからない動作を提案するためのものです。

 

合気上げという非日常の動作であっても物理の法則には逆らえません。

 

以前、「物と持ち上げる動作の原理」の投稿で合気上げという技は、日常行なわれている物を持ち上げる動作と同じ原理で行われていることを考察しました。

 

ただ、非日常的な状況ですので、日常的な動作として認識されていないだけです。

 

固定概念や先入観によってがんじがらめになってしまうと、「この状況では体をこう動かす」という方程式で記憶されます。

 

このことで、同じ原理の動きでも全く異なる動作と認識されてしまいます。


合気上げを行うためには、
まず、

  • 「出来るはずがない」という先入観を払拭すること
次に、
  • 物を持ち上げる動作の原理を知ること

 

そして、持ち上げることができる場合と、持ち上げることができない場合の違いを体感することが必要となります。

 

どのような時に物を持ち上げることができるのか?については、以前の投稿「合気上げ(物を持ち上げる動作の原理)」で書きましたので割愛いたします。


では、どのような時に持ち上げることが出来ないのか?ということについて書きたいと思います。

 

合気上げを行う条件となるのが、相手に体重をかけてしっかりと腕を掴んでもらうことです。

 

まず、ここがポイントになり、体重をかけずに軽く握られたらかかりません。

 

相手が体重をかけて掴んだとしても全体重がかかることはなく、全体重の何割かの体重しかかからないので、相手の人がどんなに重くても特別力が弱くなければ持ち上げることができます。

 

相手が体重をかけている状態は、自分に相手の体重を預けられている状態なので、相手を自分の方に引き寄せやすい状況です。

 

物を持ち上げるには、必ず物を体重を支える自分の支持面(足の裏)の中に引き寄せなければいけません。

 

そのために、瞬間的に上向きの力を加えて物の見せかけの重量を0にする必要があります。

 

上向きとの力と引き寄せる力を同時に出すために肘を曲げるのが、身体の構造に則った物を持つ時の身体の使い方です。

 

合気上げを行うために必要なことは、

  • 相手に近づいてもらい体重をかけて掴んでもらうこと
  •  掴まれた腕ではなく肘に意識を向けて腕を曲げる

ことです。

 

そして、物を持ち上げる時には、

  • 自分の体を物に近づけてから掴み
  • 肘に意識を向けて腕を曲げる

ことで、物に上向きの力が働くのと同時に物を自分の体のほうへ引き寄せる力が同時に働くことで効率よく物を持ち上げることができます。

 

合気上げと同じ原理なのです。

 

合気上げも物理の法則に則って行われるので、物理の法則上、合気上げができない状況も考えられます。

 

合気上げができない状況は、物を持ち上げることができない状況でもあるのです。

 

合気上げが行えない状況で、 まず考えられるのは、相手が距離を取って掴むケースです。

 

 相手が距離を取ると相手の体重が自分にかからなり相手を引き寄せることができなくなるからです。

 

次に、相手に肘が動かないように抑えられる状況です。

 

肘を曲げることによって持ち上げると同時に引き寄せる力を出すことができるので、肘の動きを封じられてしまうと技がかかりません。(肘以外のところから力が出して合気上げを行うケースも考えられますが、ここでは割愛します。)

 

そして、相手が重心を低く構えている状況です。

 

合気上げは自分の腰より上にある腕を相手に上から掴まれた時に行う技で、この時、相手の重心が自分の腕よりも高くなり自分の支持面に引き上げやすくなります。

 

ですが、相手に重心を低く構えられると相手の重心が自分の腕よりも低くなり、自分の支持面に引き上げることができなくなります。

 

合気上げとは、自分の重心より相手の重心が高くなっている状況で行われて効果がある技なのです。

 

足元にある物を持ち上げる時に、膝を曲げて腰を落としてから持ち上げるのは、物に重心を近づけて体に向けて引き上げる必要があるからです。

 

合気上げを行うことで物を持ち上げる時に、

 

なぜ、

  • 体を物に近づけることが必要なのか
  • 肘を曲げる必要があるのか
  • 重心を落とす必要があるのか

ということを頭(知識)だけではなく、頭を含めた全身(体感)を使って覚えることができるようになります。

 

便利な道具や機械に囲まれた恵まれた時代です。

 

このような時代からなのか、「この時にはこう動かす」というマニュアルがないと満足に身体を動かすことができない人が多いのが現実です。

 

ですので、身体の構造を無視した動作が行われてしまいがちです。

 

例えば、物を持ち上げる時に肩を上げて窮屈そうに持ち上げようとする人が多いですが、このような不合理な身体の使い方を続けてしまったら、腕や肩に負担がかかってしまいます。

 

合気上げは、このような不合理な身体の使い方を記憶しているミスプログラムを修正するために都合の良いワークとも言えます。

 

合気上げという非日常的な動作を通して、「この動作はこういう体の使い方」といった決められた先入観や固定概念に縛られることなく、動作の原理を知ることで一つの動作を工夫して様々な状況に対応することを知っていただければと思っております。