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中丹田

前回の記事「臍下丹田のデメリット」で臍下丹田の問題点について述べました。

 

今回は、3つある丹田のうちの中丹田について書きたいと思います。


臍下丹田は、体の重心に作られる意識であり、また生命の根幹をなす臓器である腸があるところで作られる意識でもある。

そのため、人の中心となり得る重要な意識であることには間違えない。

だが、人間一人では生きているわけではなく、様々な人たちの交流によって成り立っている。

臍下丹田のデメリットは生命の維持を強調させてしまい、結果として人との交流を図りにくくすることだと思う。

3つの丹田を知ることで、今現在、私が注目しているのが中丹田だ。

ただ、3つの丹田の中で一番軽視されがちな意識である。

上丹田の働きは頭脳明晰であるが、臍下丹田を作るとセットになって上丹田も強くなる。

おそらく臍下丹田が強くなることで、内臓の働きが活性化され、脳にかかるストレスが軽減し、脳の機能が最大限に引き出されるからだと考えられる。

あと、ストレスによって鬱血しやすい脳であるが、下腹部という脳から離れた箇所に意識を置くことで脳に集中した血液が内臓へも配られるようになることで脳のオーバーヒートが解消されるという理由もありそうだ。

これが、臍下丹田と上丹田が同時に活性化される理由だろう。

だが、頭が切れるようになり、胆力もあるような人、付き合いたいと思うだろうか?

いざという時には何よりも頼りになるかもしれないが、常日頃からそのような感じだったら、一緒にいて息が詰まってしまうだろう。

もちろん、頭脳明晰で胆力も備わっていれば鬼に金棒であるが、ちょっと接しづらくなるというものだ。

そこで、中丹田という意識に注目した。

中丹田の効果として、和やかなコミュニケーションを図れるようになるという点だ。

感覚としては、常に穏やかで暖かい印象を持った人といったところだろう。

さらに身体的には、呼吸が深くなるという点は無視できない。

深い呼吸というと臍下丹田の代名詞のように思われるが、呼吸に関しては中丹田の方が効果的だ。

臍下丹田による深い呼吸は、重心の安定と内臓の活性化によるものだ。

それに対して、中丹田による深い呼吸は、呼吸の働きを司る肋骨とその周りの呼吸筋の働きが活性化されるものだ。

丹田呼吸=横隔膜を使った呼吸というイメージがあるだろうが、横隔膜がついているのは肋骨下部と腰椎(背骨)である。

そして呼息を司っているのが、肋骨を動かす肋間筋である。

このように考えれば、呼吸に深く関与しているのが中丹田であることを否定できない。

あと、中丹田は3つの丹田の中心にあるという骨格構造を持っている。

そして、中丹田を作ると他の丹田、上丹田と臍下丹田も活性化されやすくなるという事実もある。

しかし、このことは広く知られていない。

一説には、中丹田が強すぎると熱性の気にやられて脳を侵すという説もあるが、私はそのように考えていない。

むしろ中丹田が形成されることで脳にこもった熱を排出されやすくなり、脳のオーバーヒートを防いでくれると考えられる。

その根拠として、呼吸による熱の排出作用がある。

ある調査で、息を止めた状態でレントゲンを写すと肺の周りが白くなることが確認されている。

これは、肺に空気が留まり、熱が排出できないことが原因だと言われている。

常識的には、体温の調節には末梢血管の拡張と収縮が深く関わっていることが知られている。

これは、拡張すれば熱が放出され、収縮すれば熱が留まるという原理によるものだ。

しかし、呼吸によって熱が放出されることは広く知られていない。

特に、脳は熱が発生しやすい上に熱がこもりやすいという厄介な性質がある。

脳は、エネルギーの消費が激しく、なおかつ骨格の中に存在するためだ。

そのため、末梢血管を拡張させて熱を放出するという特性を利用できない。

幸いなことに肺に近かく、かつ大きな動静脈で繋がれているため熱の放出を行いやすく脳のオーバーヒートを防いでくれる。

だが、過緊張によって呼吸が浅くなったらどうだろうか?

ただでさえ過緊張によって脳に熱がこもった状態であるのに、呼吸が浅くなることでうまく熱を排出できなくなる。

このことが、強く緊張すればするほど緊張がさらに強くなるという悪循環の原因となる。

その負の連鎖を解く鍵となるのが、中丹田である。

中丹田が形成されると自然と呼吸が深くなる。

前述した通り、呼吸と深く関わる箇所に中丹田を作るためだ。

そうすると、脳のオーバーヒートが解け頭の働きがクリアになる。

パソコンなどの精密機器も熱によって働きが悪くなる。

なので、熱のこもりやすいノートパソコンなどはよくファンが回る。

それと同じようなものだ。

脳の機能を高めるためにはある程度脳を冷やすことが必要なのだ。

そして、脳の機能が高まると内臓の働きが良くなるという効果も現れる。

さらに呼吸筋が活発になることで横隔膜の動きが良くなり、内臓に適度な刺激が与えられると言うことも内臓の働きが高められる要因であるようだ。

そうすれば、脳を司る上丹田、内臓の働きを司る臍下丹田も作られやすくなる。

これが、中丹田を作ると上丹田も臍下丹田も作られやすくなる理由だと考えられる。