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前職の新人教育での経験談①「可動域訓練(ストレッチ)の指導」

大田式調整動作®︎を構築する過程で発見することができたのが空間意識®︎です。

 

空間意識®︎とは、普段認識されない空間認識力を意識化して脱力動作に反映させるための意識の使い方という意味を込めてつけた造語です。

 

脱力を修練する過程で、無意識のうちに空間を認識していたと考えられますが、明確に認識してはいなかったと思います。

 

明確に意識できたのが病院に勤めていた時の新人教育の機会からでした。

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私が、空間意識®︎を見出したのが勤めていた病院を辞める少し前(2013年)の頃である。

 

その時、新しく入ってきた人と業務の引き継ぎを行う必要があった。

 

だが、その人は鍼灸マッサージの専門学校を卒業したばかりで経験がほとんどなかった。

 

私も、この病院には指圧の専門学校を卒業してすぐに入ったが、私の場合、学生時代に接骨院でアルバイトをしていたため施術の経験があった。

 

ただ、リハビリの経験は皆無だったので、就職を機にリハビリの基礎を叩き込まれた。

 

だが、施術の経験があったおかげで患者さんの身体に触れることには慣れていた。

 

そのため、一月も経った頃には多くの仕事を任されるようになっていた。

 

その新人さんも私と同じように鍼灸マッサージの専門学校へ通いながらアルバイトをしていたと思っていたが、そうではなかった。

 

それまで新しく入った人に業務を教えることはあったが、大抵は経験者だったため、あくまでも引き継ぎのようなものだった。

 

まさか退職の直前に新人教育を任されるとは思ってもいなかった。

 

「なぜ、私なのか?」とは思ったが、いい経験だと思い引き受けることにした。

 

今にして思えば、職場的には引き受けるべきではなかったと思った。

 

数年後、前職の人たちに飲みに誘われた時に、私が新人教育を行なった人がその部署の責任者(私の同僚)の言うことを聞かないと言う話を聞いたからだ。

 

だが、私自身にとっては良い経験となり、新人教育をしていなければ空間意識®︎を発見することはできなかっただろう。

 

新人さんには、はじめ寝たきりの人の拘縮を防ぐための可動域訓練(ROM)を教えることからはじめた。

 

わかりやすく言えばストレッチなのだが、一般的なストレッチとは方法が異なる。

 

必ず、動かす関節を支えながら拘縮した筋を伸ばすのだ。

 

腕を上げる可動域を高めるためには、肩関節を支持(肩の関節に手を当てる)しながら筋肉にストレッチをかける。

 

その際、強く引っ張ってはいけない。

 

強く引っ張ると伸張反射という「伸ばしたら縮む」と言う生理反射を起こしてしまい、拘縮が強くなってしまうからだ。

 

あと、関節を支持するのは筋肉をストレッチする際に脱臼するリスクを無くすためだ。

 

一般的な人は、関節を支えなくても、滅多なことでは脱臼することはない。

 

しかし、拘縮が進んでいる人は著しい筋力低下状態にあり、ちょっとのことで脱臼、ないし骨折をするリスクが高い。

 

割れ物を触れるようも慎重に行わなければならないのだ。

 

ただ、関節を支持するストレッチは一般的な人にとっても効果的だ。

 

それは、関節の動きを滑らかにするテクニックを活用することができるためだ。


今にして思えば、一番シビアな患者さんのリハビリから始めたのは新人さんにとっては無茶振りだったと思います。

 

だが、その病院に入院していた患者さんの約6〜7割が拘縮の強い人だったので、そうは言ってはいられない。

 

しかし、この人だったら「ものにしてくれる」と思っていました。

 

私の期待に応えてくれ、しっかりと基本を抑えてながら、メキメキと上達していきました。

 

退職して数日後、病院の方にご挨拶に行った時、実質の経営者であった事務長さんから

「3ヶ月で即戦力になるまで指導してくれてありがとうございます。病棟のスタッフからの評判も良く、助かりました。」

と言うありがたいお言葉をいただきました。

 

このお言葉は、以後の大田式調整動作®︎を行う励みになりました。

 

次回の記事『前職の新人教育での経験談②「マッサージと指圧の指導①」』では、マッサージと指圧を指導した時の話をしたいと思います。