足を外向きに構えるメリット(股関節の外旋と内旋の使い分け方)

動画サイトなどで合気道の先生のデモンストレーションを目にすることがあります。

 

それを見て、

  • なんで足を外向きになるように構えるのだろう?

と疑問に思いました。

 

人が、相手に対して垂直に構えようとすると前足を内向きにして構えるのが自然です。

 

実際に、他の武道や格闘技などでもそのように構えます。

 

このように考えると足を外向きにする構えは、異質に思えます。

 

ですが、自ら攻撃をしないことを前提とした合気道では、理に適っています。

 

それは、なぜなのか?

 

その原理について、身体動作的観点からの考察です。

外向きに構えるメリット

足を外向きに向けて構えると、足運びが良くなります。

 

特に、腰を落として構えていると顕著です。

 

普段の生活のように腰を低くせずに歩くのであれば、わざわざ足を外向けにする必要はありません。

 

ですが、腰を落とし膝を曲げると足にロックがかかり動きにくくなります。

 

この状態から動こうとすると、どうしても予備動作を必要とします。

 

この予備動作を武術では、居着くと言います。

 

ですが、足を外向きに構えると予備動作を必要とせずに動き出すことが可能になります。

 

その反面、攻撃を加えにくくなるというデメリットがあります。

 

通常、武道や格闘技では、相手に攻撃を加えることが前提となるため、常に攻撃を加えられる体勢にする必要があります。

 

そのため、相手に対して半身に構えるのであれば、足を内向きにします。

 

相手に攻撃を与えるのであれば、足を内向きに構えた方が良いからです。

 

攻撃、特にパンチなどは、足を内向きにしなければ威力を出せません。

 

その理由は、足を内向きにすることで体重移動によって動いた上体に急ブレーキをかけ、その勢いを転化して腕に伝え、腕を加速されることができるためです。

 

これは、電車や車などが急ブレーキをすると中に乗っていた人が勢いよく前に飛んでしまうのと同じ原理です。

 

ゴルフや野球のバットなどのスイングを行う時も、前に出した足を内向きにするのも、そのためです。

 

逆に、足を外向きにししまったら体重移動した勢いにブレーキをかけることができないので、パンチなどまともに打てません。

 

ですが、合気道のように自ら攻撃する必要がないのであれば、むしろ低姿勢で素早い移動できる足を外向きの構えの方が都合が良いです。

 

動き出すために行なった体重移動にブレーキがかからないので、動作のロスをなくすことができるからです。

 

なので、居着きにくくなり、相手の動きに対応しやすくなります。

 

一部の合気道で半身に構えた前足を外向きにするのは、このような理由だと考えられます。

外向きと内向きを使い分ける理由

足を内向きにすることを解剖学的に言うと、

  • 股関節の内旋

と言います。

 

それに対して、足を外向きにすることを解剖学的に言うと、

  • 股関節の外旋

と言います。

 

股関節を内旋させると体の動きにブレーキをかけやすく、

 

逆に、股関節を外旋させると体の動きにブレーキがかからなくなります。

 

合気道の技は、相手に対して途切れのない円の動きによって相手の死角を取り続け、体勢が崩れたところで技をかけます。

 

ただ、合気道でも投げを放ったり、相手を固めたりする瞬間は、足を内向きにする股関節が内旋する状態になります。

 

ですが、技が極まれば、すぐに足を外向きに構え直します。

 

これは、相手の不測な動きと、違う相手からの不意打ちに備えるためです。

 

このように、股関節の外旋と内旋をうまく使い分けているのです。

 

なぜ、股関節を外旋させた方が体をスムーズに動かすことができるのでしょう?

内旋と外旋のメリットとデメリット

股関節を内旋すると足を前に出すことができなくなります。

 

そのため、体重移動の力をストップして骨盤を回転させることができ、反作用の力を使って腕を速く動かすことができます。

 

多くのスポーツが前足を内向きにして構えるのは、そのためです。

 

それに対して、股関節を外旋させると、足を前に出しやすくなります。

 

なので、腕を速く振る必要のある種目には向きません。

 

しかし、足を使った移動、特に中腰で動くような動作を行う時には有利になります。

 

例えば、アイススケートのスケーティングなど。

 

また、足を高く上げるスポーツ、例えばフィギュアスケートやクラッシックバレーなどでは、両足を外向きに開いて立つことを基本としています。

 

股関節を外旋させると股関節の屈曲(モモを上げる)動作が行いやすくなるからです。

 

開脚前屈も股関節の屈曲動作ですので、必ず股関節を外旋させて行います。

 

では、なぜ股関節の内旋と外旋によって足が動かせなくなったり、足を動かしやすくなるのでしょうか?

メリットとデメリットの構造的な理由

この理由は、骨盤と大腿骨の構造にあります。

 

股関節を内旋させながらモモを上げようと、骨盤の腸骨という骨に大腿骨が当たってしまいます。

 

それに対して、股関節を外旋させてモモを上げても大腿骨は腸骨に当たりません。

【参考記事】Y字バランスのやり方

 

なので、足を大きく前に出しやすくなります。

 

試しに、上り坂を登る時に、足をやや外に開いて歩いてみましょう。

 

おそらく、普段よりも楽に登れると思います。

 

上り坂の場合、平坦な道を歩くよりもモモを大きく上げる必要があります。

 

ですが、何も考えずに歩くと、平坦な道を歩くように足先を真っ直ぐにして歩こうとします。

 

そうすると、股関節の力を利用できずに、膝まわりの筋肉(大腿四頭筋)に負担がかかり、モモがパンパンになってしまいます。

 

ですが、少し足を外に向けて歩くと股関節から脚を動かせるようになり、腰の内側にある腸腰筋というインナーマッスルを利用することができ、大腿四頭筋の負担が少なくてすみます。

【参考記事】坂道の歩き方(脱力歩行法)

 

中腰で動くというのは、上り坂を登っているのと同じ状況です。

 

なので、足を外向けにして構えた方が体捌きを行いやすいのです。

 

これが、合気道の先生が足を外向けに向けて構える大きな理由だったのです。