臍下丹田の位置

インターネットで「丹田」と検索をかけると、さまざまな情報が飛び交っています。

 

よくありがちなケースが、丹田の位置を特定しようという試みです。

 

丹田自体は、物質ではなく概念なので、それに対して位置を特定しようとするのはナンセンスなのですが、丹田にも物質的な位置を特定したがるのは西洋科学的な物質優位の思考が一般的になった社会背景なのかもしれません。

 

話は逸れますが、東洋医学では五臓と(肝・心・脾・肺・腎)六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の臓器があるといわれますが、これは西洋医学でいう内臓を意味する言葉ではありません。

 

例えば、肝=肝臓ではなく、肝とは肝の臓の働きと言った方が理解しやすいかもしれません。

 

ただ、肝には肝臓の働きだけではなく目や筋肉の働き、体の側面(経絡)、あと怒りといった心理面の働きを司っているところが大きく異なります。

 

このような認識のズレを生んだ一因に、江戸時代にオランダの解剖書を翻訳した(解体新書)際に、西洋医学で用いられる臓器を東洋医学で言われている臓腑の働きに類似したものを当てはめたからだと思います。

 

レバーを肝臓と当てはめずに、そのままレバーと言えば問題がなかったのかもしれません。

 

このように、東洋思想を西洋医学に当てはめようとすると認識のズレが生じます。

 

東洋思想は働きを主に置き、西洋科学は物質を主体に考えるからです。

 

そもそも丹田というのは、古来中国の道術(神仙術)が由来だと言われ、丹は薬(今では猛毒として知られている水銀のことですが、当時は薬として扱われていました。)を言い、田は作物を耕す所を意味します。

 

ですので、薬(丹)を作る場所(田)という意味です。

 

道術では丹田を練ることで、不老不死を目指したと言われます。

 

丹田を練る練丹法は、戦前流行したと言われましたが、戦後その流行が幻だったかのように認知されなくなりました。

 

私が丹田という言葉を知ったのは、呼吸法を始めた20才の時だったので今から25年前でしたが、その当時は丹田という言葉はおろか呼吸法すら知られていなかった時代でした。

 

また、当時ヨガもほとんど知られておらず、23年前に起こった新興宗教団体が起こした事件によって世間に広まったぐらいです。

 

その新興宗教団体がドラックを使って瞑想を行うヨガを行なっていたのです。

 

なので、ヨガというとネガティブなイメージがあり、呼吸法などを行なっているなどと世間で口外しようものなら怪しい人扱いされていました。

 

それが、ここ20年近く前から海外のセレブがヨガを行なっていることが知れ渡ったのか分かりませんが、いつの間にかヨガが流行りをはじめ、しだいに広まりました。

 

ヨガでは丹田という言葉は使いませんので、その頃に丹田という言葉が知られるようになったのか?詳しくは分かりませんが、おそらくヨガで言われる第2チャクラの位置が丹田(日本では臍下丹田、道術では下丹田)の位置に類似するからだと考えられます。(私が調べた感じでは、丹田は腸の辺り、チャクラは重心線上にある7つのポイントだと言われその中の第2チャクラは仙骨の手前にある体の重心点だという説もあり、細かく言うと同じではないように思います)

 

その関係からか第2チャクラを丹田のチャクラと言われて始めたのかもしれません。

 

そこで、ヨガとともに瞑想や呼吸法、丹田という言葉も逆輸入という形で日本に入って来たと思います。


 

戦後、丹田をはじめとする東洋思想は非科学的ということで排除される形で跡形もなく消し去られてしまった感がありますが、海外では、戦後、カウンターカルチャーの影響なのか、中国や日本、インドなどの東洋思想が見直されていました。

 

このことから、東洋的身体動作法(ヨガ、呼吸法、武術など)や瞑想などが市民権を取得していたのかもしれません。

 

日本では忘れされたものが海外から逆輸入という形で再び脚光を浴びるのは皮肉なものです。

 

日本でも丹田という言葉が見直されて私も肩身が狭くなくなってうれしい限りではありますが、丹田という言葉に対する認識が観念的で不透明な所が多く、多くの誤解があるように思います。

 

続きは、次回の投稿「丹田の正体」で書きたいと思います。