日本に住んでいるとわからないのですが、日本人は、色んな意味で他の国の人たちとは違うと聞きます。
生活習慣や言語体系が独特なのと、体つきも独特で、外国では「日本人はすぐにわかる」と言われているそうです。
色々と細かい違いがあるそうですが、特に
- 姿勢
- 歩き方
が独特なのだそうです。
日本人の多くは、猫背の姿勢です。
西洋人に比べ、東洋人には猫背の人が多いと言われ、特に日本人の猫背率はとても高いと言われており、日本人の約8〜9割の人が猫背だとも言われています。
そして、歩き方も歩幅が狭く、膝が曲がりガニ股です。
日本国内では意識されることは少ないかもしれませんが、外国で生活すると一目瞭然だそうです。
そのため、同じ東洋人でも日本人は、ある意味目立つのでしょう。
それに対して、多くの外国人は腰を反らす姿勢をとっています。
そして、すっと脚を伸ばし大股で歩きます。
それは、西洋人に限らず、多くの東洋人もそうです。
なぜ、西洋人と日本人の姿勢は、こうも大きく違うのでしょう?
西洋人と日本人との姿勢の違い
西洋人と日本人とで、なぜ姿勢が違うのかという説明でよく出てくるのが、
- 西洋人は狩猟民族
- 日本人は農耕民族
だからだという説明です。
狩猟民族は、狩をするために槍を投げたり、石を投げたりして獲物を取る必要があります。
そのため、物を投げるのに適した姿勢が、腰を反らして胸を張る姿勢をとるようになった。
それに対して、農耕民族は田畑を耕すために腰をかがめたり、しゃがんだりする必要があるため、猫背の姿勢が適していたという説です。
一見すると「なるほど」となりそうですが、この説には矛盾があります。
西洋人の全てが狩猟を行なっていたわけでもなく、日本人の全てが農耕を行なっていたわけではありません。
なので、狩猟民族だからとか農耕民族だからということで姿勢が変わったというのは、いささかおかしな話です。
同じ農耕民族だと言われる中国やその他のアジア人には、猫背が少ないです。
ある意味、日本人と西洋人の姿勢が両極端なように思えます。
正直なところ、明確な理由はわかりません。
私は、西洋人と日本人との姿勢の取り方の違いは、文化であったり、美意識の違いであると考えます。
西洋人は幼少の頃から胸を張る姿勢を取るように躾られると聞いたことがあります。
日本人も昔は、背筋を伸ばすように躾られていたので現在の日本人のような極端な猫背は少なかったみたいです。
ですが、胸を張るような姿勢を取ることはなく、肩甲骨を前に出すような姿勢を好んでいます。
このように、同じように背筋を伸ばすといっても、
- 西洋人の場合には、骨盤を前に倒し、腰を反らし、胸を張る
- 日本人の場合には、骨盤を後ろに倒し、腰を起こし、胸をすぼめる
ような姿勢を好みます。
西洋人の姿勢には、見た目の逞しさと真っ直ぐさを感じます。
それに対して、日本人の姿勢には、逞しさと真っ直ぐさを感じません。
ですが、道具を使ったり、手作業を行う際には、肩甲骨を前に出す姿勢の方が身体の構造的には理にかなっています。
その証拠に、日本人の手先の器用さは、他の国からの評価が高いです。
日常的に箸を使っているからという面もありますが、近隣の韓国や中国でも箸は使われています。
ですが、日本の物作りは群を抜いています。
ちなみに韓国人や中国人には猫背の人が少ないです。
また、日本の工芸品や刀、絵画などは、幕末に来日した外国人の評価が高く、当時、印象派が一世を風靡していた時代に、日本人の浮世絵に強い衝撃を与え、強く影響を与えたとも聞きます。
このように、手先の器用さと細やかな細工を作りだすために特化させたのが、日本人独特の猫背の姿勢だったと考えます。
そして、猫背の姿勢に最適化するように、数多くの道具を作り出しています。
それらの道具の使い方も日本の道具は独特で、同じ用途の道具でも使い方が真逆だと言われます。
道具の使い方
例えば、日本のノコギリは引いて使います。
しかし、世界の常識ではノコギリは押して使い、実際に西洋のノコギリは押して使います。
ですが、日本人にとってノコギリは引いて使うことが当たり前です。
なので、西洋人がノコギリを押して使うことを知った時には驚きました。
ただ、西洋のノコギリを見たこともありませんし、使っているところも見たこともないので、どのようにして使うのだろうという疑問が湧いてきました。
以前、アメブロ(アメーバーブログ)を書いていた時、日本と西洋のノコギリの使い方についての記事を書いたことがありました。
自分軸が目覚める脱力トレーニングメゾット『体型によって動作が変わる?』
この記事を書くために、西洋のノコギリの形を知るためにインターネットで検索したりして、その使い方を知ることができました。
日本のノコギリは、中腰になって膝より低いところに木材を置き、足で木材を固定させて引きながら木材を切っていきます。
それに対して、西洋のノコギリはテーブルの上に木材を置き、万力で木材を固定させて腰より上で使います。
そうなると、必然的に押すように切ることになり、形状も太い作りになっています。
それに対して、日本のノコギリの形状は細く、たわみやすいです。
もし、押す時に力を入れるととたわんでしまいますが、引く時に力を入れると伸ばされるためたわまず真っ直ぐになります。
形状を細くするメリットは、切り口が細くなることにあります。
実際に、日本のノコギリは欧米のD I Yを行う人に人気があると聞きます。
その理由は、綺麗に切ることができるからだそうです。
その他の道具、鉋(かんな)や鎌(かま)、鍬(くわ)も引いて使います。
このように、大きな力を出す(体全体を使う)時、
- 西洋人は押した方が力が出しやすく
- 日本人は引いた方が力が出しやすい
という特徴があります。
それに対して、細かい作業を行う時には、西洋人は引いた方が行いやすく、日本人は押した方が行いやすい。
例えば、マッチで火をつける時などは、
- 外国人が引く
のに対して、
- 日本人は押す
というように。
このように、同じ動作を行う時に真逆の動きになるところが面白いところです。
これは、西洋人と日本人の姿勢の違いに大きく影響しています。
反り腰の西洋人にとって、
- 骨盤が前傾しているため前に力を押し出しやすく
- 肩甲骨を後ろに位置するため引いた方がコントロールしやすく
なります。
それに対して、猫背の日本人は、
- 骨盤が後傾しているため後ろに力を引き出しやすく
- 肩甲骨が前に位置するため押した方がコントロールしやすく
なります。
このような姿勢の大きな違いは、とても特徴的です。
これは、歩き方にも反映されます。
歩き方
西洋人の歩き方と日本人の歩き方は、大きく違うと聞きます。
西洋人の歩き方は、背筋を伸ばし、踵の真ん中あたりから地面をつけ、つま先で蹴り出すようにして歩き、腕の振りが大きいです。
この時、脚の動きの起点が腰椎(ウエストのあたり)になります。
西洋人の場合、背筋を伸ばして歩いているため背筋群が発達します。
そして、骨盤が前傾していることで、歩くために必要な腸腰筋とハムストリングを有効に使うことができるため、脚と腰の筋肉が発達します。
それに対して、日本人の歩き方は、背中が丸まり、踵の外側から地面につけて地面をするように歩き、腕の振りが小さいです。
この時、脚を動かす起点が膝になります。
この理由として、日本人は猫背の姿勢のため背筋群があまり使われないことにあります。
そして、骨盤が後傾しているため、腸腰筋とハムストリングスがうまく使うことができず脚と腰の筋肉が発達しません。
そのため、足先(膝下)だけで歩くことになり、太い脚、ガニ股になってしまい、力強い歩き方ができず、うつむき加減になり、歩幅の狭いチョコチョコ歩きになってしまいます。
特に、女性でハイヒールを履いて歩く時などに顕著です。
これが、日本人の歩き方が「汚い」とか「変だ」とか言われる大きな理由だと考えられます。
非合理的な動作を行う現在の日本人
ですが、意外なことに日本人の歩き方と西洋人の歩き方の基本パターンは、
- 踵から地面に着地してつま先で蹴る
という脚の使い方で基本的に同じです。
ただ、西洋人の骨盤が前傾しているのに対して、日本人の骨盤が後傾しているため、動きの起点と使われる筋肉が異なってしまうのです。
しかし、このような脚の使い方は骨盤が前傾している外国人向けの歩き方であり、骨盤が後傾している多くの日本人には合わない歩き方なのです。
これは、骨格の構造とは合わない歩き方を行ってしまっているため、全身の連動性がうまく働かず、バランスの崩れた歩き方になってしまっていると言えます。
ですが、踵から着地するという動作が常識になっているため、「どういうふうに歩くのか?」想像がつかないかもしれません。
結論を言えば、西洋の文化が入ってきたことで、日本人に合った歩き方が消失してしまったということです。
ということは、現在の日本人と昔の日本人とは全く異なる歩き方をしていたということになります。
では、昔の日本人はどのようにして歩いていたのでしょう。
昔の日本人の歩き方
昔の日本人は、つま先から着地して踵で地面を蹴るように歩いていたと考えられ、腕もほとんど振らずに歩いていました。
今の常識からすれば???となると思います。
ただ、現在の日本人でも、和服を着て草履で歩くことに慣れると、自然とこのような歩き方になります。
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ですが、西洋人が和服を着て草履で歩いても、踵から着地して、腕を大きく振る歩き方になってしまいます。
そのような歩き方では、着崩れを起こしやすく、草履も脱げてしまい、歩きにくいです。
和服と草履を着て歩くために適しているのが、骨盤の後傾の姿勢なのです。
この動作のメカニズムは、動作の起点が骨盤にあることが前提になります。
そうすると、地面に付けた方の股関節がわずかに回旋させながら脚を後に動かし(股関節の伸展)、体が前に進みます。
その動きに合わせて肩甲骨ごと腕が動くため、腕を大きく振らなくてもバランスを取ることができます。
このことで、上下動や左右に揺れの少ない歩き方ができるようになります。
西洋人や現在の日本人は腕の動きの起点となるのが肩関節です。
そして、脚の動きの起点が西洋人の場合はウエストで、日本人が膝になります。
それに対して昔の日本人は、肩甲骨が腕の動きの起点となり、脚の動きの起点が骨盤と股関節になります。
あと、着物を着ると帯で姿勢が支えられるため、腰が大きく曲がることがありません。
そのため、骨盤が後傾した姿勢でも背筋を伸ばすことが意識され、背筋が発達します。
そして、股関節を起点に動かすため腸腰筋とハムストリングも使われるため、足腰の筋肉も発達します。
見た目の姿勢は似ていても、昔の日本人と今の日本人とは歩き方、動作の仕方、動作の質は似て非なるものです。
このように考えると現在の日本人は、昔の日本人の骨盤後傾の特徴を保ちながら、西洋人の動きを真似ていることになります。
良い所取りのハイブリットであればいいのですが、残念ながら、体の構造に合っていない非合理的な動作を行ってしまっていることで身体を退化させてしまっていることは否めません。
これは、呼吸の仕方でも同じことが言えます。
呼吸の仕方
姿勢の取り方が違うと、呼吸の仕方も異なります。
特に、深呼吸をする時などが顕著です。
よく
- おなかを膨らませるように息を吸って
とか、
- 腹式呼吸が体に良い
などと言われ、多くの人は、このとこを信じています。
ですが、多くの日本人にとって腹式呼吸は体質的に適していないのです。
腹式呼吸は大正の頃、西洋から入ってきた考え方で、西洋人に適した呼吸でもあります。
もし、多くの日本人が腹式呼吸を実践しようとしても、うまくできないばかりか、体を壊してしまうことだってあります。
なぜ、多くの日本人に腹式呼吸が合わないのか?
これも骨盤が後傾していることと関係しています。
呼吸、特に深く息を吸う時に体の癖が強く現れます。
- 反り腰の人は、腰の反りが強く
- 猫背の人は、背中の丸みが強く
といった具合に。
これは、どういうことかと言いますと、
- 反り腰の人は息を吸えばおなかが膨らみ、
- 猫背の人は息を吸えばおなかが凹む
ということです。
現代の私たちは、息を吸えば「おなかがふくらむ」ということが常識になっているため、そのことに疑問を抱くかもしれません。
試しに、両腕を上げてバンザイをしてみてください。
もしくは、きついズボンを穿いてみてください。
そうすると、息が吸われていませんか?
そして、おなかが凹んでいませんか?
そうです。
息を吸おうとするとおなかは凹むのです。
それは、腹式呼吸でも例外ではありません。
多くの日本人の猫背体型では、正しい腹式呼吸はできません。
そのため、腹式呼吸を誤解して行おうとしてしまいます。
どのような誤解かと言いますと、息を吸う時におなかの筋肉を弛ませてしまうという誤解です。
正しいとされる腹式呼吸は、弛ませておなかを膨らませているのではありません。
動いているのは、おなかではなく、腰の骨。
腰椎の前弯が強くなり、前に動いているのです。
反り腰の多い西洋人にとって、腰を反らすことは容易なことです。
なので、息を吸い横隔膜が緊張するのに伴い、腰椎の前弯が強くなって腰の反りが大きくなり、おなかが前の方へ移動します。
そう、おなかを膨らませているのではなく、おなか膨むように腰椎の前弯が強くなっているのです。
そうすれば、無理なく肋骨が広がり息が多く深く入っていきます。
ですが、猫背の多い日本人が形だけを真似て腹式呼吸をしようとするとおなかを弛ませてしまいます。
そうすると、肋骨が広がらないため息が深く入りません。
そこで頑張って深い呼吸を行おうとすると、腹筋を使って息を吐き出そうとします。
そうすれば、横隔膜が伸びる伸張反射によって横隔膜を強く緊張させ、多く息を入れることができます。
ですが、このようなことを繰り返していくと、おなかがたるんで内臓の支えが弱くなり内臓の下垂を起こしやすくなり、骨盤に位置する内臓に負担がかかります。
そして、腹筋を使って無理矢理に横隔膜を伸ばしてしまうと、横隔膜の上にある心臓を圧迫してしまい、心臓に負担をかけることになります。
多くの日本人にとって腹式呼吸は、百害あって一利なしです。
多くの日本人が自然に深く呼吸をした時、息を吸うとおなかが自然に凹みます。
これは、猫背で骨盤が後傾しているため、息を吸うと横隔膜の緊張に伴い、骨盤の後傾が強調されるためです。
そうすると、骨盤が後ろに移動し、おなかが凹むように見えます。
このように、西洋人と日本人とでは、呼吸の仕方も異なるのです。
美意識と姿勢
このように見ていくと、日本人の骨盤後傾気味の姿勢が独特なのは明らかです。
ですが、多くの外国人の中でも西洋人ほど胸を張っている人種はいないように感じます。
ある意味、西洋人の姿勢も独特だとも思えます。
このような独特の姿勢を作り出しているのが、民族間に共有される美意識によるものだと考えています。
美意識が姿勢を作る。
この根拠として、
- 西洋の文化には多数の芸術作品
- 昔の日本の手工芸品などの高い芸術性
があることです。
このように、西洋人も日本人も高い芸術的感性を持っていると考えます。
西洋人は、造形美を好むと考えます。
その理由は、西洋人の芸術作品において、背筋を伸ばし、胸を張る姿勢をとっている絵画や彫刻が多く存在するためです。
そして、クラッシックバレーや社交ダンスなども、背筋を伸ばして胸を張る姿勢を美徳としています。
このような、西洋人の身体美によって、このような姿勢が教育されてきたと考えます。
それに対して、日本人は物を作り上げる機能美に意識が向いていたと考えます。
繊細な工芸品を作り上げるために、いくつもの道具を作り、使い分け、それらを使いこなすための身体を構築してゆく。
そのために、骨盤を後傾させた姿勢が都合が良かったのだと考えます。
では、なぜ骨盤を後傾させた方がいいのか?
この原理は、骨盤を後傾させることで肩甲骨が連動して前に出しやすくなり、腕を動かしやすくなることにあります。
そうすると、全身の力を手先に伝えやすくなり、イメージ通りの物を作ることができるようになります。
これが、昔の日本人の工芸品の繊細さであり、美意識を表現するするために特化して身体が猫背の姿勢だと考えます。
胸を開けない日本人、しゃがめない西洋人
日本人は猫背の人が多く、胸を開くことができない人がいると聞きます。
そして、西洋人にはしゃがめない人がいると聞きます。
このような特徴は、日本人と西洋人それぞれの美意識によって独特な姿勢を作っているためだと考えました。
多くの日本人が骨盤後傾に特化し、胸郭が前傾した姿勢になります。
胸を開くためには胸郭を後傾させる必要がありますが、胸筋が縮み伸ばしにくくなるため、胸を開くことが苦手になります。
ですが、しゃがむ動作は得意です。
しゃがむためには、膝を大きく曲げる必要がありますが、それだけでは成立しません。
膝を曲げる動きに合わせて、股関節屈曲、骨盤の後傾、腰椎の後弯、胸郭の前弯、肩甲骨の前方移動の動きを連動させる必要があるためです。
逆に、多くの西洋人が胸郭後傾に特化し、骨盤が前傾した姿勢が癖になります。
しゃがむためには骨盤を後傾させる必要がありますが、背筋や臀筋(おしりの筋肉)が縮み伸ばしにくくなるため、しゃがむことが苦手になります。
ですが、常に胸を張る習慣のある西洋人は、胸を大きく開くことが得意です。
胸を開くという動作は、肩甲骨を後ろに動かすだけでは成立できません。
肩甲骨が後ろに動かす動きに合わせて、胸郭の後傾、腰椎の前弯、骨盤の前傾の動きを連動させる必要があります。
ただ、昔の日本人も昔の西洋人も胸を開くこともしゃがむこともできたと考えています。
今の時代でも、幼い子供は、日本人でも西洋人でも胸を開いたり、しゃがんだりできるはずです。
ですが、時代が下り、加齢に従って、徐々にできない人が増えてきたと考えるのが自然です。
昔は、何をするにしても人の手を使わなければなりませんでした。
なので身体、得に体幹の動きが固くなると作業を行うことができません。
しかし、現在社会、特に先進国においては機械化が進み、体幹の動きが固くなっても生活に支障をきたしません。
そのため、民族的に持っている体の癖が固定化し、体幹の動きを制限してしまっていると考えられます。
このことで、
- 胸を開くことのできない日本人
- しゃがめない西洋人
が増えてきているのだと考えられます。
退化していく日本人
日本人に多い猫背の姿勢は「肩こりになりやすい」と言われていますが、「肩こり」という言葉が言われるようになったのは明治になってからだと聞きます。
それ以前には、肩こりという言葉は存在しなかったと。
江戸の頃までは、何を行うにしても手作業だったため、身体をよく動かしていたことは容易に想像できます。
なので、肩こりの原因となる血行不良を起こすことも少なかったのでしょう。
そして、江戸末期から明治初頭ぐらいに撮られた写真を見る限り、現在の日本人とは異なる姿勢をとっているのが確認できます。
現在の日本人もその当時の日本人も、基本的に骨盤が後傾気味で肩甲骨が前にある姿勢に変わりありません。
ですが、現在の日本人は背中から腰にかけての筋肉、お尻と脚の筋肉が細くよろっとしている人が多い印象です。
それに対して、当時の日本人は背中から腰にかけての筋肉、お尻と脚の筋肉が発達しているため体の支えがしっかりしていて背筋が伸びています。
実際に、当時来日した西洋人の手記にも日本人の身体能力の高さに驚いたという内容が書かれていると記されています。
その身体能力の下支えになっていたのが、和服に草履、床に座る生活だと考えます。
明治に入るまでは、洋服を来て、靴を履き、椅子に座るという文化などありませんでした。
太平洋戦争前でも、和服に草履、床に座る生活が多かったと聞きます。
洋服を着て、靴を履き、椅子に座るのが一般的になったのは、太平洋戦戦後からです。
和服には帯があり、帯で姿勢が支えられるため、腰を曲げる姿勢を取りにくくなります。
草履を履いて歩くためには、股関節を軸に足を動かす必要があるため、背筋が伸びていなければ、うまく歩くことができません。
そして、床から立ち上がったり、床に座ったりするためには、ある程度の脚力が必要です。
和服を着て、草履を履き、床に座る生活を続けることで、背筋を伸ばし、足腰が鍛えられることになります
ですが、着物を着なくなり、草履を履かなくなった現在では、骨盤の後傾した姿勢が姿勢の崩れを産んでしまったのでしょう。
そして、現在の日本の家には畳の部屋が少なくなりどの家庭にも椅子があり、椅子に腰掛けることが当たり前になっています。
椅子から立ち上がるのであれば、強い脚力は必要ありません。
そうなると必然的に足腰が弱くなります。
そうであれば、椅子に座る西洋人も足腰の衰えが危惧されそうですが、日本人ほど深刻ではありません。
彼らは、椅子に座る際には背筋を伸ばすように躾けられるため、背筋が鍛えられ、足腰の力を維持することができるためです。
ただ、日常生活の動作が少なくなったことで、背筋や腰筋、臀筋(おしりの筋肉)、膝の筋肉が固くなってしまってしまい、しゃがむ動作が苦手になってしまっています。
足腰の筋力が衰えてしまった日本人でも骨盤を後傾させることが得意なため、床に座ることは得意なままです。
その証拠に、ソファーがあっても床に座ってしまう人がいるぐらいです。
ですが、日本人の退化は確実に進んでいることが危惧されています。
最近、日本人の中にも、しゃがむことのできない人が増えてきていると聞きます。
そのような人たちは、日本人の得意であった胸郭前傾、腰椎後弯、骨盤後傾、股関節屈曲、膝屈曲、足の背屈を連動させる動作をうまく行えなくなっています。
かと言って、背筋が鍛えられているかと言えば、そうではありません。
西洋的な生活様式になったにも関わらず、骨盤後傾体質という基本構造は大きく変化していません。
そればかりか、体を支える筋力が衰えて、柔軟性も低下してしまっています。
このことが、日本人の姿勢の崩れ、筋力の低下、体質の弱体化を招いている大きな要因だと考えられます。