力の透し
重力の力と垂直抗力の力を骨に伝え、効率よく効果的に対象物へ伝えることが「力の透し」です。
これは、私が指圧の臨床を通して培ったものです。
私は指圧師ですので指先を多用していました。
私が手技を覚え初めの頃、指の使い方よりも体重の移動に意識が向っていました。
なぜかと言いますと、指の力はとても弱く体重を使わなければ強く押すことができなかったからです。
ですが、指は構造上、とても細く弱く、その指に体重をかけてしまうと指をかばうために知らず知らずのうちに肘や肩、手首に力を入れてしまいます。
あたりの強い指圧やマッサージを行う人は、このように肩や腕の関節をロックさせるように押さえます。
施術を続けるうちに、治療を行うのに強い刺激を与える必要がないことに気が付いたのです。
むしろ、強刺激の施術は百害あって一利なしです。
なぜかと言いますと、このような押し方では、力を体内に浸透させることができず、侵害刺激反射によって筋肉が緊張し、それに伴って交感神経優位に働き、自律神経のバランスを崩してしまいます。
そして、押す人自身も緊張が強くなり自律神経のバランスを崩します。
何より、指に体重を乗せるような手技では「力み」よって目的とするポイント(ツボ)に力を浸透させることができず施術の効果をあげられません。
なぜならば、従来の指圧やマッサージの手法は体重を乗せて行う上から下への力を利用するものであるためです。
それに対して、力の透しを用いた指圧は骨の垂直抗力を用いる下から上への力を利用することができます。
骨の垂直抗力とは重力に抗する力で、地面との接面(立位では足裏、座位では坐骨)から背骨を通り、手や指先へと伝わります。
この力を用いれば、効果的に内部に力が浸透するため、弱い力で十分です。
なので、指に大きな負担をかけずに済みます。
大田式調整動作を行うことで、全身の関節の動きが滑らかになります。
このことで、効率よく効果的に「垂直抗力」を透すことができるようになり、
などの効果も期待できます。